日本の自動車産業はGDPの約20%を占めおり、日本はドイツと並び世界有数の内燃機関(エンジン)の技術を持っています。
本記事では、商社の営業として大手自動車メーカー・工作機械メーカーと取引する目線から、日本の自動車産業の未来について解説します。
自動車の種類と排ガス規制

前提情報として、自動車の種類や世界の排ガス規制の取り組みをご紹介します。特に排ガス規制による変化により、日本の自動車産業を支えるサプライチェーンが多大な影響を受けると予想されています。
自動車の種類
| 車種 | 略称 | 主な特徴 | エンジン | 環境性能 |
|---|---|---|---|---|
| ガソリン車 | – | 内燃機関で駆動 | 有 | 低 |
| ディーゼル車 | – | トルクが大きい | 有 | 低 |
| ハイブリッド車 | HV.HEV | エンジン + モータ | 有 | 中 |
| プラグインハイブリッド車 | PHV.PHEV | エンジン + モータ+ バッテリ | 有 | 中 |
| バッテリ電気自動車 | EV.BEV | バッテリのみ | 無 | 高 |
| 燃料電池車 | FCV.FCEV | 水素で発電 | 無 | 高 |
排ガス規制
2030年までの排ガス規制の強化により、世界全体でエンジン車の需要が急減しています。排ガス規制の強化とは、世界各国が掲げるカーボンニュートラルの目標で、その内容は国や時代によって異なります。
日本
- 2030年度までに、乗用車のCO2排出量を2021年度比で約50%削減。
- 2035年までに新車販売を100%電動化。
欧州
- 2030年度までに、乗用車のCO2排出量を2021年度比で約55%削減。
- 2035年までに新車販売を100%電動化。
- Euro7基準(2025年以降適用)
- NOxや粒子状物質(PM)の削減、すべての車の排ガス規制統一など、規制の更なる厳格化も計画しています。
アメリカ
- 2030年までに、乗用車のCO2排出量を2005年比で約50~52%削減。
- カリフォルニア州を含む一部州で2035年までに新車販売を100%電動化。
- CAFE基準(企業平均燃費基準)
- 2026年までに新車の燃費をリッターあたり約20.4kmまで引き上げる基準が設定。
中国
- 中国6b基準
- PM、NOxなどの排出基準を強化。
- 新エネルギー車(NEV)政策
- 2030年までに新車販売の40%以上を電動化。
くろひつじここでいう電動化は、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車を指すよ!
参考文献:BOLT.EARTH 経済産業省 日本自動車工業会
電気自動車の普及率
電気自動車の普及率は世界全体で約18%です。2020年以降は伸び率が大きく、2020年4.2%、2021年9%、2022年14%、2023年18%と上昇を続けています。








EU各国や中国では、電気自動車の普及が急速に進んでいます。それに比べアメリカ、日本ではまだ内燃機関が搭載している車が90%を占めています。
日本において、国内の自動車メーカーを購入する人の割合は93.8%に上ります。国内の主な自動車メーカーはハイブリッド技術や水素燃料電池車に重点を置いてきた為電気自動車の開発が遅れており、開発の遅れがそのまま普及率に影響されていると考えられています。
車種別の販売推移
直近の2020年~2024年における、車種別の市場シェアの推移は以下のとおりです。
| 車種 | 主な特徴 |
|---|---|
| ガソリン車 | 10%減少 |
| ディーゼル車 | 10%減少 |
| ハイブリッド車 | 5%増加 |
| プラグインハイブリッド車 | 3%増加 |
| バッテリ電気自動車 | 9%増加 |
| 燃料電池車 | 微増 |
ガソリン車
- 市場シェアの推移:2020年には全体の約60%を占めていましたが、2024年には約50%に減少しています。
- 動向:電動車両の普及や環境意識の高まりにより、ガソリン車の需要は徐々に減少しています。
ディーゼル車
- 市場シェアの推移:2020年には全体の約25%を占めていましたが、2024年には約15%に減少しています。
- 動向:排出ガス規制の強化やディーゼルゲート問題の影響で、ディーゼル車の人気は低下しています。
ハイブリッド車
- 市場シェアの推移:2020年には全体の約10%でしたが、2024年には約15%に増加しています。
- 動向:燃費性能の向上や環境規制の強化に伴い、各メーカーがハイブリッド技術を積極的に採用しています。
プラグインハイブリッド車
- 市場シェアの推移:2020年には全体の約2%でしたが、2024年には約5%に増加しています。
- 動向:電動化への移行期において、内燃機関と電動モーターの両方を備えたPHEVの需要が増加しています。
バッテリ電気自動車
- 市場シェアの推移:2020年には全体の約3%でしたが、2024年には約12%に増加しています。
- 動向:充電インフラの整備やバッテリー技術の進化により、BEVの普及が加速しています。
燃料電池車
- 市場シェアの推移:2020年から2024年にかけて、全体の約0.1%未満で微増しています。
- 動向:技術開発やインフラ整備が進行中であり、商用車分野での採用が期待されています。
参考文献:FOUURN
電気自動車の主要メーカー


販売台数世界一位:テスラ


- 国:アメリカ
- 市場シェア:約18.5%
- 特徴::モデルYやモデル3が主力で、高性能と長い航続距離が評価されています。


販売台数世界二位:BYD


- 国:中国
- 市場シェア:約17.5%、
- 特徴::価格が安く、プラグインハイブリッド車においては市場シェアの約40.1%を占めています。


販売台数世界三位:吉利汽車(Geely)


- 国:中国
- 市場シェア:約9%
- 特徴::多様なブランドラインナップと新モデルの投入で急成長しています。
ハイブリット車の主要メーカー


販売台数世界一位:トヨタ


- 国:日本
- 市場シェア:75%
- 特徴::プリウスやカムリなど多様なハイブリッドモデルを展開し、世界市場で圧倒的なシェアを保持しています。


販売台数世界二位:ホンダ


- 国:日本
- 市場シェア:10%
- 特徴::インサイトやアコードなどのハイブリッド車を提供し、市場での存在感を示しています。


販売台数世界三位:フォード


- 国:アメリカ
- 市場シェア:5%
- 特徴::フュージョンやエスケープなどのハイブリッドモデルを展開し、特に北米市場でのシェアを拡大しています。
参考文献:ロイター Investors ウォール・ストリートジャーナル
日本の自動車市場


日本の主要な自動車メーカーはハイブリット車に強みを持っており、ハイブリット市場はまだ拡大しています。しかし前述した排ガス規制により今後は縮小傾向になることが予想されています。特にトヨタ以外の自動車メーカーは、電気自動車の開発コスト捻出の難しさから、更に厳しい市場となるでしょう。
販売推移
トヨタ
| 年 | 順位 | 台数 |
| 2020年 | 世界1位 | 約960万台 |
| 2021年 | 世界1位 | 約1,048万台 |
| 2022年 | 世界1位 | 約1,048万台 |
| 2023年 | 世界1位 | 約1,109万台 |
| 2024年 | 世界1位 | 同水準推定 |
販売台数が世界水準で見ても最も多く、ハイブリット車において非常に強みを持っています。電動化に向けた開発は遅れが見られますが、予算は十分に確保できる為今後も急速な衰退な無いと思います。
ホンダ
| 年 | 順位 | 台数 |
| 2020年 | 世界5位 | 約470万台 |
| 2021年 | 世界5位 | 約450万台 |
| 2022年 | 世界7位 | 約377万台 |
| 2023年 | 世界7位 | 約410万台 |
| 2024年 | 世界7位 | 同水準推定 |
販売台数は横ばいで順位を落としており、ハイブリット車はトヨタに圧倒的なシェアを取られています。但し二輪において世界市場で約33.8%のシェアを持ち、販売台数も直近2020年以降順調に伸ばしています。
2024年から電動二輪の開発を進めていくと発表していますが、参入の遅れから東南アジアの市場動向により経営が左右されるという見方もあります。
日産
| 年 | 順位 | 台数 |
| 2020年 | 世界7位 | 約370万台 |
| 2021年 | 世界6位 | 約400万台 |
| 2022年 | 世界6位 | 約344万台 |
| 2023年 | 世界8位 | 約344万台 |
| 2024年 | 世界8位 | 同水準推定 |
販売台数は減少傾向で順位を落としており、ハイブリット車はトヨタに圧倒的なシェアを取られています。EVのラインナップは豊富ですが、世界的なシェアを取れていません。
ルノー・日産・三菱のアライアンスにより開発コストの効率化を図っていますが、低下価格・低粗利の戦略により経営も圧迫しています。日産はホンダと経営統合し、2026年8月に共同持ち株会社を設立することを目指しています。
スズキ
| 年 | 順位 | 台数 |
| 2020年 | 世界9位 | 約250万台 |
| 2021年 | 世界9位 | 約280万台 |
| 2022年 | 世界9位 | 約296万台 |
| 2023年 | 世界9位 | 約316万台 |
| 2024年 | 世界9位 | 同水準推定 |
販売台数は順調に伸ばしており、日本の低価格帯の需要とインド市場に強みを持っています。しかしインド市場における直近のシェアは、2020年の約50%から2023年の約41.4%まで減少しています。
この背景には韓国の現代自動車やインドのタタ・モーターズなどの台頭があり、特にSUVセグメントでの競争激化や電気自動車市場の拡大が影響しています。
直近の動向
業界再編
各自動車メーカーで技術提携や経営統合を巡る議論が活発化しています。これはグローバル競争を視野に入れた生き残り戦略や、電気自動車開発を目的とした技術力強化・開発予算確保を目的とするものです。
競合の多様化
自動車業界は「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる技術革新の波に直面しており、各メーカーはこれらの分野での競争力強化に注力しています。特に、電動化や自動運転技術の開発が加速しており、他業種からの参入も増加しています。
仲介業者の削減
電動開発の遅れの背景には、日本特有の年功序列や労働基準法はもちろん、仲介業者を主とする商流も要因として考えられています。日本は中国と比べ労働コストが高い為、仲介業者を削減し不要なコストをかけない経営が求められています。
| 国 | 仲介業者 | 図面の開示 | 保守費用(1台当たり) |
| 日本 | 有 | ○ | 約10,000~25,000ドル |
| 中国 | 有 | ○ | 約10,000~20,000ドル |
| アメリカ | 無 | × | 約20,000~50,000ドル |
| ドイツ | 無 | × | 約15,000~30,000ドル |
参考文献:業界サーチ Merkmal Biz MONOist ニッコス 内閣府
最後に
自動車産業に関わるメーカーやサプライチェーンは、2030年以降大きな転換期を迎えます。他業種から参入する競合の増加や、内燃機関用部品であるエンジン、トランスミッションの需要縮小が予想されている為です。
転換期には多くの会社が淘汰されてしまう為、それぞれの会社は生き残り戦略を模索していくでしょう。
しかしそこで重要なのは、時代の過ぎた会社を存続させることではなく、成長産業へより多くの人材を流動させることです。


