私は現役で商社の営業マンをしています。会社にもよるとは思いますが、商社で働いていると「三方よし」等の商人を起源とする言葉をよく耳にします。
その為か、周りの同僚や競合他社の友人たちは、自然と商人についての豆知識が身に付いています。今回はそんな商人の歴史や、商売に対する向き合い方についてご紹介します。

- 商社で働いている、もしくはこれから働こうとしている人
- 商人の歴史や商売の概念について興味がある人
新野くん商人って商売人の略称だよね?商売をしている人がみんな商人だとすると、物凄い数になるよね。



メン!そうだね。営業や接客等、販売に関わる人たちはみんな該当するんだ。まずは商人の定義から紹介するね。
商人とは、商品やサービスを売買して利益を得る人や企業のことを指します。日本の商法第4条では、以下のように商人を定義しています。
- 商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。
- 個人でも法人でも「商行為」を反復・継続的に行えば商人に該当する。
つまり、営利目的で反復・継続的に取引を行う個人や法人は商人に該当します。多くのビジネスマンが商人に該当する一方で、その商人の歴史や概要について義務教育で習う機会は少ないのが実情です。
それは社会全体にとって必要な教育が協調性であり、商人のような独立心を誘発するようなものは避けたい目的があったのかもしれません。しかし、私は全員が商人であるべきだと考える人間です。
今回は古来より商いを生業としてきた人々が、商売に対してどう向き合ってきたかをご紹介します。


- 古来より商人は、三方よしの言葉通り長期的な信用関係を重視してきた。
- 世界三代商人の中でも、特にユダヤ人は逸脱した実績がある。
- タルムードの教えは実践的な商売の知恵として活かすことができる。
商人の概要


商人は古代から現代に至るまで、交易の中心的な役割を果たしてきました。
- 古代:シルクロードを通じた交易、フェニキア人・ローマ帝国の商業活動
- 中世:地中海貿易のヴェネツィア商人、東アジアの倭寇(海上貿易)
- 近世:江戸時代の近江商人、明治時代の三井・三菱財閥
近年では流通経路が発展し、職業における商人という概念は無くなりましたが、少し遡った戦後の闇市においては、多くの商人。当時で言う露天商が活躍しました。
近代の商人
戦後間もない日本では政府の統制が機能しておらず、また深刻な食糧・物資・雇用不足が重なったことが要因となり、出稼ぎ労働者や的屋・復興兵等が出店する闇市が誕生しました。
闇市が誕生したことによる影響として、例えば当時日本で蔓延した結核の薬である結核抗結核薬が闇市に出回ったことにより、多くの命が救われたことがあります。
一方で偽物も多く販売されており、偽物を購入した患者は命を落とすケースもありました。現代において、商人と聞いてネガティブな印象を持つ人が少なくない理由はここにあります。
商人の役割
偽物を販売し、短期的な儲けを重視する人は商人とは呼びません。商人の本来の役割は、需要と供給をマッチングさせ社会に貢献することです。歴史的にも、多くの商人は人々の生活を豊かにする役割を果たしてきました。
- 市場を安定させる…商品の流通を円滑にし、必要な人に届ける。
- 価値を生み出す…製造者と消費者をつなぎ、物やサービスの価値を提供する。
- 長期的な信用を重視する …顧客との信頼関係を築き、持続的な商売を行う。
例えば、江戸時代の近江商人の理念である三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)は、長期的な成功のためには倫理的なビジネスが重要であることを示しています。
偽物を売る人々は短期的な利益のみを追求し、顧客の生命や健康を危険に晒します。このような行為は商人の本来の役割と相反する為、より正確な言葉を用いると詐欺師に当たります。
商人と詐欺師の違い
| 比較項目 | 商人 | 詐欺師 |
|---|---|---|
| 目的 | 市場の安定、顧客の満足 | 短期的な利益のみ |
| 信用 | 長期的な信頼を築く | 顧客を欺く |
| 倫理観 | 顧客の利益を考慮 | 顧客を搾取 |
| 持続性 | 継続的な商売を目指す | 一時的な利益で終わる |
商売において短期的な利益を優先するか、長期的な信用を築くかは大きな分かれ道ですが、歴史的に成功した商人は長期的な信用を重視していました。
世界三大商人


世界三大商人とは、華僑、印僑、ユダヤ人のことを指します。彼らは共通して、政治的・社会的に生活苦を強いられた境遇から外国へ出稼ぎに出ており、同族同士で集まるコミュニティを築いた歴史を持ちます。
現代においては、特定の業界における主要な人物をこの3種類に分類できる程、彼らは商人として優秀な実績を持ちます。これは不遇な境遇により、自分の子供に対して幼少期からビジネスを教えていたことが起因しています。
本章では、華僑や印橋及びユダヤ人について、それぞれの特徴をご紹介します。
華僑
華僑とは、中国本土を離れて外国に移住し、現地で経済活動を行う中国系移民を指します。東南アジアを中心に、主に商業や不動産の分野で活動しており、その人口は世界全体で4000万人以上とされています。
彼らの総資産は約369兆円にも上り、一人当たりの資産平均値は922万円となります。
代表的な人物
- 李嘉誠(リ・カシン):香港を拠点とする実業家で、長江実業グループの創設者。
- 李兆基(リ・チャオキ):香港の不動産王で、恒基兆業地産の創設者。
- 郭鶴年(クオク・フックン):マレーシア出身の実業家で、ケリーグループの創設者。
印僑
印僑とは、インドを離れて外国に移住し、現地で経済活動を行うインド系移民を指します。欧米や中東を中心に、主にITや医療の分野で活動しています。
その数は世界全体で3500万人以上とされており、彼らの総資産は約59兆円にも上ります。国策として数学教育に力を入れており、近年ではカースト制度に依存しないIT業界に多くの人が参入しました。
代表的な人物
- サンダー・ピチャイ氏:GoogleのCEO
- サティア・ナデラ氏:MicrosoftのCEO
- シャンタヌ・ナラヤン氏:AdobeのCEO
ユダヤ人
ユダヤ人は特定の国が存在せず、宗教であるユダヤ教を信仰している人のことを指します。古代イスラエル王国の滅亡後に世界各地へ離散し、当時迫害の対象であった金融業を中心に活動しました。
ユダヤ人の人口は1400万人。世界人口の0.2%程度にも関わらず、彼らの総資産は約369兆円にも上り、一人当たりの資産平均値は2600万円となります。
2022年の世界長者番付トップ10では、半数に当たる5人のユダヤ系の人物がランクインしています。
- 4位 ビル・ゲイツ氏…Microsoft共同創業者
- 6位 ラリー・ペイジ氏…Google共同創業者
- 7位 セルゲイ・ブリン氏…Google共同創業者
- 8位 ラリー・エリソン氏…オラクル会長
- 9位 スティーブ・バルマー氏…Microsoft元CEO
また、経済学分野におけるノーベル受賞者の約40%がユダヤ系の人物に当たります。
ノーベル賞受賞者のユダヤ人が占める割合
| 分野 | 受賞者数 | 割合 |
|---|---|---|
| 化学 | 37人 | 19% |
| 経済学 | 38人 | 41% |
| 文学 | 16人 | 13% |
| 平和 | 9人 | 8% |
| 物理学 | 56人 | 25% |
| 生理学・医学 | 60人 | 26% |
代表的な人物
- マーク・ザッカーバーグ氏…Facebook創業者
- スティーヴン スピルバーグ氏…映画監督
- マイケル・ブルームバーグ氏…ブルームバーグ創業者
代表的な人物を挙げても、世界的有名企業の創業者が出てきます。この他にもゴールドマン・サックスの創業者や、ロスチャイルド家がユダヤ人に当たります。
ここまで逸した功績がある中で、その要因が単なるコミュニティの形成力や血縁だけでは説明がつきません。彼らが成功を続ける要因として、ユダヤ人に伝わるタルムードの教えが重要な役割を果たしていると考えられています。
タルムードの教え


タルムードはユダヤ教の教えが詰まった経典であり、成功哲学として世界中の人々に学ばれています。この教えは単なる宗教的なものではなく、実践的な商売の知恵として活かすことができます。
本章では、タルムードの教えで記述されている、商売で活かせる法則をご紹介します。
卵をすべて一つのカゴに盛るな
ユダヤ商人はリスクを分散し、常に複数の収益源を持つようにしています。これは現代ではビジネスの常識である、一つの商品・市場だけに依存しない意味を示しています。
安定していると思われるビジネスでも、常に市場は変化します。複数の収益源を持つことで、環境の変化に対応することができます。
具体例
- 本業だけでなく副業を行い、複数の収入の柱を持つ。
- 1つの商品だけでなく関連商品も取り扱い、ターゲット層の囲い込みを行う。
- アナログ型の実店舗販売やプッシュ型営業だけでなく、オンライン販売やプル型営業を行う。
学び続ける者だけが勝つ
ユダヤ人は教育を非常に重視し、知識こそ最大の財産と考えています。タルムードの教えでは、1日勉強を休めば2日後退すると言われる程、インプットが日常の中に取り込まれています。
どんなに成功しているビジネスも、学びをやめた瞬間に衰退が始まります。日々学び続けることを継続していければ、数年後には必ず結果がついてきます。
具体例
- 常に新しいマーケティング手法を学ぶ。
- 競合の成功事例を分析し、自分のビジネスに活かす。
交渉とは相手が納得する形で進めるもの
タルムードには、人の心を掴めば価格は二の次という考えがあります。つまり低価格はそれだけで付加価値を生むことはなく、相手が納得する価値を提供することが重要だとされています。
値下げは一時的な勝利をもたらしますが、相手の信頼を得る交渉は長期的な成功に繋がります。特にB2Bビジネスにおいては、自社の信頼は顧客リストという最大の資産となって残るでしょう。
具体例
- 値下げでは信頼を獲得できない。顧客が喜ぶ「付加価値」をつける。
- 取引先や顧客との長期的な関係を重視する。
他人の成功を願え
タルムードには人の成功を願う者は自らも成功するという教えがあります。これは「競争よりも共存」を重視する考え方です。
短期的な利益の為に他者を蹴落とすのではなく、他者も巻き込んで全体として成功した方が、結果的に自分の利益が大きくなります。
具体例
- 競合と協力し互いに利益を得る。
- ビジネスの場で紹介やリファラルを積極的に活用する。
お金を大事にしすぎると失う
タルムードには、貯金は大切だが適切な投資をしなければ成長しないという考えがあります。節約ばかりにこだわると、結果的に機会を逃してしまうのです。
コスト削減は重要ですが、必要な投資を惜しむと成長が止まります。より長期的な視点で、いつ・誰と・何処でお金を使うべきかを考えることが重要だとされています。
具体例
- お金を働かせる投資をする。
- リセールバリューを意識した買い物をする。
まとめ
タルムードの教えは単なる商売のノウハウではなく、長期的な成功をする為に非常に実践的な考え方です。商売の成功は知識と信頼によって決まります。タルムードの教えは、それを実践する為の道標となるでしょう。
| タルムードの教え | 商売への応用 |
|---|---|
| 卵を一つのカゴに盛るな | 事業の多角化でリスク分散 |
| 学び続ける者だけが勝つ | 常に新しい知識を学び、市場の変化に対応 |
| 交渉とは相手が納得する形で進めるもの | 価格競争よりも付加価値を提供 |
| 他人の成功を願え | 競争ではなく協力で成長する |
| お金を大事にしすぎると失う | 必要な投資を惜しまない |
最後に
今回は世界三大商人をテーマとし、商人の概要からタルムードの教えをご紹介しました。
商売における重要な用語として、「リスク分散」「学び」「交渉」「共存」「投資」があります。これらはタルムードの教えにも記述されており、現代での商売においても再現性高く活用できます。
昨今ではユダヤ人の商法に関して注目されており、書籍もいくつか販売されています。是非皆さんの商売でも活かして頂ければと思います。
今後も現代のビジネスマン向けに情報を発信していきますので、本ブログをブックマークして頂けますと幸いです。





