私は現役で商社の営業マンをしてますが、独立し自社の商品やサービスを言語化するまで営業の概要や役割について深く考えてはいませんでした。今回はそんな営業について、様々な観点からご紹介したいと思います。
営業とは?

営業とは会社が自社の商品やサービスを認知・販売するためのマーケティングの1種です。マーケティングの観点から、営業はプッシュ型とプル型の2種類に分かれます。
アウトバウンドマーケティング(プッシュ型営業)
アウトバウンドマーケティングとは、会社が自社の商品やサービスを直接顧客に宣伝し販売する手法を指します。後述するインバウンドマーケティングと比べ、どのような層へ訴求するかのターゲティングが重要となります。
主な手法
- 営業活動…テレアポ・ダイレクトメールなど
- 広告訴求…オンライン・テレビ・ラジオ・新聞・雑誌など
- 出展参加…イベント、展示会など
インバウンドマーケティング(プル型)
インバウンドマーケティングとは、顧客が自発的に会社の商品やサービスを購入するように促す手法を指します。不特定多数の人へ興味や関心を引くコンテンツを提供し、その中の潜在顧客を自然な形で引き寄せることを目的としています。
主な手法
- ブログ
- Youtube
- SNS
- ホットペッパーなど
比較表
| コスト | 成約率 | 期間 | 商品 | |
| プッシュ型 | 高 | 高 | 短期 | 要 |
| プル型 | 低 | 低 | 長期 | 不要 |
コスト
コストは圧倒的にプッシュ型の方が高いです。またターゲティングの重要度も異なり、プッシュ型はPRターゲットを間違えると無駄なコストを割くどころか相手の時間をいたずらに奪い、ネガティブな印象を与えるリスクもあります。
PRとは?
「Public Relations(パブリック リレーションズ)」の略で、日本語では「広報」を意味する言葉です。 一般的には企業や商品、サービスなどを認知してもらうための方法を意味します。
成約率・期間
プル型営業はコンテンツを使用し不特定多数相手に情報発信を行う為、日々コストを削るプッシュ型と比べ成約率や期間の重要性が低いのが特徴です。但し時間というコストは消費する為、会社の固定費はできるだけ下げ長期で成果を追う必要があります。対してプッシュ型は短期で成約率・期間を厳格に追う必要があります。
商品
プッシュ型は営業活動する中で自社の商品を直接的に宣伝します。顧客の困りごとをヒヤリングし、自社の強みとマッチングさせ短期で成約を獲得することを目的とする為です。対してプル型は作成したコンテンツで集客し、そのコンテンツの内容で信頼を獲得することが目的の為自社の商品は必ずしも必要ではありません。
営業の種類

平均年収
414万円
特徴
多種多様な商品を取り扱いサプライヤーと顧客の橋渡しを行う。
業務内容
新規開拓、既存顧客フォロー、仕入れ、価格交渉、納品調整、輸出入業務。
平均年収
471万円
特徴
自社製品を顧客に直接販売する。製品に対する深い知識が求められる。
業務内容
新製品の提案、アフターサービス、顧客の要望を製品開発にフィードバック。
平均年収
391万円
特徴
店舗やECサイトで消費者に直接商品を販売する。
業務内容
販売促進企画、店舗運営、在庫管理、顧客対応。
平均年収
449万円
特徴
ソフトウェアやITサービスを販売する。技術的な知識が求められる。
業務内容
クライアントの課題に対するITソリューションの提案、導入支援、保守サポート。
平均年収
469万円
特徴
銀行、証券、保険などの金融商品を販売する。FP資格の保有を推奨。
業務内容
資産運用の提案、ローンの紹介、保険商品の販売、顧客の資産管理。
平均年収
416万円
特徴
不動産の売買や賃貸を仲介する。高額商品のため、顧客との信頼関係の構築が重要。
業務内容
物件の紹介、契約交渉、アフターフォロー。
平均年収
700万円
特徴
医薬品や機器を病院や診療所に販売する。
業務内容
医療関係者への製品説明、臨床データの提供、医療現場でのサポート。
平均年収
421万円
特徴
広告枠やメディアサービスを販売する。
業務内容
広告主への提案、広告キャンペーンの企画、メディアプランニング。
平均年収
398万円
特徴
輸送・保管サービスを提供する。
業務内容
医荷主との契約、物流システムの提案、コスト削減の提案。
平均年収
398万円
特徴
人材派遣や転職支援サービスを提供する。
業務内容
企業の人材ニーズのヒアリング、適切な人材の提案、求職者の支援。
平均年収
438万円
特徴
電力、ガス、再生可能エネルギーを企業や家庭に提供する。
業務内容
新規顧客の開拓、契約プランの提案、エネルギーコスト削減の提案。
年収参考:https://doda.jp/guide/heikin/syokusyu/#anc_job_05
本統計では医療業界の営業が最も高い給与となりますが、商社やITの営業も給与が高い傾向があります。同じ営業職でもそれぞれの業界で待遇や獲得できるスキルが異なる為、転職や就職される方はその業界ごとの特徴を調べ、何故自分がその業界を希望するのか説明できると今後の将来設計に繋がると思います。
生産性の高い営業とは?

高年収企業の営業を目指す場合、まず自分自身が生産性の高い営業である必要があります。ではそもそも生産性の高い営業とはどのような指標を基に定義するのでしょうか。営業の生産性を考える際、営業ROIが用いられます。
営業ROIとは
営業ROI*Return on Investment for Sales*とは、営業活動に投入した投資額に対する利益の割合を測る指標で、営業活動がどれだけ効率的かを示します。営業部門に投資したリソースがどの程度のリターンを生み出しているかを数値化することで、営業戦略や営業活動の効果を評価するために使われます。
計算式

例えばある企業が営業に100万円を投資し、営業活動を通じて150万円の売上(50万円の利益)を得た場合、営業ROIは以下のように計算されます。

この結果、営業活動に対して50%のリターンが得られたことを意味します。
営業ROIの重要性
営業ROIを意識することで以下のメリットがあります。
- 生産性の見える化…営業活動が利益にどの程度貢献しているかを可視化し予算配分を最適化できます。
- 撤退基準の明確化…営業施策の成果を数値で評価できるため改善タイミングを見つけやすくなります。
- 経営の安定化…効果が低い営業活動や非効率なリソースを特定し、固定費の見直しができます。
営業ROIは営業活動の効果を評価する上で重要な指標であり、営業効率と企業の収益性向上のために欠かせない視点です。
世界から見た日本の生産性

では日本における営業の生産性は世界で比較するとどうでしょうか。OECD(経済協力開発機構)を情報源としているマッキンゼー・アンド・カンパニーのデータでは、世界のグローバル企業における営業ROI平均値は400~500%としています。対して日本の営業ROI平均値は230%程と先進国G7では最下位に留まっています。

以下経済産業省が発表している図表の一部も抜粋します。

引用元:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/pdf/honbun_1_1_3.pdf
日本の営業ROIが低い要因

では日本の営業ROIが低い要因はなんでしょうか。マッキンゼーや各書籍などで様々な要因が指摘されていますが、ここでは評論家視点ではなく実際に現場で営業活動をしている人間があくまで個人的に思う意見をご紹介します。
コミュニケーションコスト
できないことは断る。一度断った案件に対する理由の説明やレスポンスはしない。
できないことは理由を顧客が納得するまで説明する。顧客が納得しない場合は上司へ相談する。上司次第で社内調整もしくは説明資料を作成する場合もある。
労働基準法
- 即日クビになる可能性がある。
- 労働市場の人材が流動的。社内や取引先の人間も流動的な為営業=人間関係という意識が薄い。
- 時間外手当が高額で労働時間も厳格に決められており社員自身が生産性を重視している。
- クビになるには適切な理由や期間が必要。
- 労働市場の人材が固定的。社内や取引先の人間も固定的な為営業=人間関係という意識が高い。
- 時間外手当が低額で労働時間もゆるく社員自身が生産性を軽視している。
年功序列
- 現在現場で結果を出している人間が評価され役職の入れ替わりが激しい。
- 現在の現場を把握している人間が会社のタクトを振るう為適切なタスクのDX化ができる。
- 給与を現在の結果と紐付けする為人件費が流動的で経営の安定や社員モチベーションに繋げられる。
- 過去現場で結果を出していた人間が評価され役職が固定的。
- 現在の現場を把握していない人間が会社のタクトを振るう為適切なタスクのDX化ができない。
- 年齢的な城壁も大きくデジタルの過剰なカスタマイズ化により生産性が逆に下がる企業も少なくない。
- 給与を過去の結果と紐付けする為人件費が固定的で経営が圧迫し社員モチベーションに繋げられない。
商流

商社で日々仕事をする中で、現代でも「商流」という言葉をよく聞きます。「商流」とは、依頼から商品納入までの流れ、つまり”商いの流れ”のことを言います。これは日本特有の商取引における流通構造の一つで、特に製造業や卸売業などで重視されています。似たような流通構造は他の国にも存在しますが、日本ほど強固で独自のものは少ないです。
日本の商流の特徴
例えば製造工場で使用している生産設備の部品を購入する場合、幾何公差や素材が記載されている図面があれば設備メーカーではなく地場の治具屋へ依頼した方が仲介手数料が少なく購入できます。その為、図面があれば基本的に地場メーカーへ依頼するのが一般的です。
対して日本は導入仕様に図面の提出を盛り込んでいない場合があり、かつ例え必要な図面があっても導入当初の設備メーカーもしくはその商社から購入することが多いのが実態です。商流が固定的だと仲介業者が増えランニングコストが高騰する為、日本の生産性を下げる要因とも言えます。
AIに置き換わる時はいつ来るのか

昨今のAIの進歩により、ホワイトカラーのAI化について話を聞いたことがある人は多いと思います。結論から言うと、事務やアシスタント業務の領域はAI化が着実に進んでいきますが、営業の領域がAIに置き換わる日はまだ先になると考えられています。
理由として、事務・アシスタント業務が扱うデータは社内や既存取引先と限定的で、かつ情報の開示も容易な領域ですが、営業が扱うデータは現在取引がない会社の情報や製品が主となり、公正取引の観点から情報の開示も困難な為、相当数の会社が自社の内部情報をクラウド化するまではAIに必要なソースが入手できないからです。
AIに置き換わる領域
営業事務

売上管理、工程管理、勤怠管理、各案件のデータ保管など、実績や既にデータがあるものを入力する業務はAI化が今後も加速していきます。
アシスタント業務

見積・契約書作成、取引先とのやり取り、社内調整など、こちらも過去の社内データからある程度予測可能な領域となります。
議事録の作成

打合せ議事録の作成に関しては既にAIを導入してる会社もあります。サプライヤーや仲介業者は、導入する商品やサービスの仕様を取り決めする際各工程で打合せを行います。打合せでは聞く・話す・書く・質問をするを同時に行う必要がありますが、これをAIで代用すると、聞く・書くことにおいては人間より精密な精度で行なってくれます。
信頼と実績

一般的には営業の信頼と実績はAI化が難しいと思われていますが、実際の現場はそこまで重視していないのが実情です。現場の多くは過去の実績から取引先を選定していますが、これは一度顧客側が管理をDX化すれば、それまでの信頼や実績は短期間で崩れるでしょう。この点に関しては営業の将来性に楽観視ができない要因となり得ます。
AIへの置き換えが難しい領域
新規顧客の開拓

見込み顧客の予測は現在でも大まかには可能ですが、実際には顧客の状況やニーズは日々変化します。競合他社のアプローチも日々変化する中で、これらの領域に関しては容易にはAI化できません。顧客の状況や競合他社の価格帯が完全にDXし、常にソースの提供ができる時代となるまで、現在では現実的ではありません。
市場動向調査

メーカー営業などのサプライヤーは商品価格を統一している会社がほとんどですが、商社や一次下請などの仲介業者は個々の営業により粗利率が異なります。理由は顧客の予算や市場の価格帯、競合相手の価格など、粗利率を決める要素が多岐に渡る為です。この属人的な領域は相見積がある限りソースの開示が困難な為、現状はAI化が難しいと考えられます。
将来の展望
今後、AI技術の進化により営業プロセスの自動化や効率化は進むでしょう。しかし営業活動の中核である属人的な要素は人間の営業担当者が引き続き重要な役割を果たすと考えられます。AIは営業の「補完的なパートナー」としての役割が増え、ルーティンワークやデータ分析・リードの管理などを担当する一方で、営業はより生産的な業務に集中していくので、少なくとも今後AIに置き換わり職を失うリスクは低いでしょう。
まとめ
今回は実際に日々現場で営業活動をしている経験から、営業について様々な観点からご紹介しました。営業は特に属人的な職種の為、人によっては異なる価値観をお持ちの方もいるかと思います。その場合にはご自身の考えの方を優先して頂ければと思います。
以下サイトでは私が実際に働いている商社の営業についてご紹介しておりますので、ぜひ合わせてご覧ください。




