戦略は会社にとって非常に重要な役割を担います。
本記事では、全ての会社にとって等しく重要な戦略について、中小企業・大企業それぞれの視点から解説します。

- レゴやUSJは戦略により会社をV字回復した実績がある。
- 中小企業は職人技を鍛えるのではなく、模範力を鍛えるべきである。
- 有効な戦略とは、顧客を知る・感情で売る・採用人材を改善することである。
戦略によりV字回復した事例
経営が傾いた際、戦略の変更が起点となり多くの会社が経営を立て直した実績があります。ここでは戦略の重要性を考える上で、実際に戦略を変更したことにより会社をV字回復した事例をご紹介します。
レゴ(LEGO)

レゴは1970年〜91年にかけて順調に事業を拡大させていましたが、90年代後半から2000年初頭の10年間にわたって徐々に衰退。2004年には倒産の危機に陥りました。
同社製品の強みはその互換性にあり、1958年以降に発売されたブロックは現在に至るまで全て連結できるように設計されています。
経営危機に陥った理由
理由の1つは特許切れです。レゴ社はブロックを連結する技術の特許を持っていましたが、1998年に失効。その結果中国やカナダの企業が類似品を低価格で売り始め、シェアが徐々に縮小していきました。
そしてもう一つの要因は、ゲームボーイやプレイステーションなどのゲームが一般家庭に普及したことで、子供たちの遊び方が大きく変わったことです。
対処した内容
これに対抗すべくレゴは多角化戦略を推進し、アクションフィギュアの発売やテーマパークの増築・ゲーム開発などに取り組みました。しかし、いずれも結果に結びつかず2003年まで赤字が継続。
その後CEOに就任したヨアン・ヴィー・クヌッドストープ氏(現ブランドグループ会長)は、原点に立ち帰りレゴらしさを取り戻すことへ注力。経営危機を乗り越えるため、以下の施策を実施しました。
- 固定費の見直し:2004年に従業員1200名を解雇。2005年にレゴランドを売却。
- 選択と集中: ゲームや子供服などの事業から撤退し、主力であるブロック玩具に資源を集中。
- ユーザー参加型の製品開発: 2008年にファンから製品アイデアを募集するプラットフォーム「LEGO CUUSOO(現:LEGO Ideas)」を立ち上げ、一定の支持を得たアイデアを製品化。
これらの施策によりレゴは業績を回復させ、現在では世界トップクラスの玩具メーカーとしての地位を確立しています。
参考文献:ダイヤモンド・オンライン
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン

USJは2001年の開業当初、年間約1,100万人の来場者を記録しましたが、翌年には700万人台に急落。さらに、開業直後に消防法違反や期限切れ食品の提供などの不祥事が相次ぎ、来場者数の減少に拍車をかけました。
加えて、開業時に借り入れた約1,250億円の巨額の負債が経営を圧迫し、新規アトラクションへの投資もままならない状況に陥りました。
経営危機に陥った理由
不祥事の頻発
- 工業用水の混入:飲料水に工業用水が混入する事故が発生。
- 賞味期限切れ商品の販売:賞味期限が過ぎた食品が販売されていた。
マーケティング戦略の欠如
開業当初、USJは映画の世界を体験できるテーマパークとして宣伝していましたが、映画ファンや若年層に焦点を当てすぎた結果、一部のアトラクションに恐怖感が強いイメージが残りファミリー層が敬遠。
また各アトラクションが独立しており、統一感やストーリー性が希薄。アメリカ特有のモンスターメイクアップやアニマルアクターズなどのショーは日本人には理解しずらく、不評となりました。
対処した内容
USJは経営再建の為、2010年にP&G出身のマーケティング専門家である森岡毅氏を迎え入れ、マーケティング部門のトップに据えました。
消費者視点の徹底
森岡氏は徹底した消費者視点に立ち、ターゲット層の拡大やテレビCMの質の向上・チケット価格の適正化(値上げ)などの大胆な施策を実施。消費者のニーズを分析しハリー・ポッターエリアなどの新規アトラクションやイベントを次々と導入しました。
これらの施策により、USJは年間来場者数を大幅に増加させ、経営危機からのV字回復を遂げました。
それぞれの戦略

ここまでは大企業における戦略の実例をご紹介しました。しかし戦略とは、どちらかというと中小企業の方が重点が置かれます。本章ではその理由と、大企業と中小企業がとるべきそれぞれの戦略をご紹介します。
戦略の重要性
大企業の場合、所有者は株主であり施策・戦略を考え実行するのはサラリーマン社長です。株主の多くは既に経済的に充実しており、業績である数字こそ追えど戦略に関しては無関心の場合がほとんどです。
大企業の社長は責任こそ重大ですが、戦略を見誤り業績の悪化を招いた場合でも退任すれば退職金を満額もらえ、持ち家などの資産や預貯金などの財産を取り上げられることはありません。
一方で、中小企業の多くは社長が会社を所有しているケースが多く、会社の業績は社長の経済力に直結します。この違いは大きく、中小企業は戦略に賭けるリスクが大企業とは大きく異なります。
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略とは、会社が競争市場で優位に立つための戦略論です。由来はイギリスの航空技術者フレデリック・ランチェスターが提唱したランチェスターの法則に基づいています。
この法則は戦争における兵力の効果を数式で表したものですが、これがビジネスに応用されました。ランチェスター戦略は、以下の「第一法則」と「第二法則」を基にしています。
局地戦の法則・一騎討ちの法則
例えば地元密着型のラーメン店が、大手ラーメンチェーン店に対して「ご当地限定メニュー」や「独自の味」で勝負する戦略です。
1対1の戦いでは「武器の性能 × 兵力の数」で戦力が決まる
- 中小企業が市場で戦うときは、大企業と正面から戦わずに「局地戦」に持ち込むのが有利
- 特定の地域・特定の顧客層に集中し、小さな市場で圧倒的なシェアを獲得する
- 商品やサービスの「差別化」が重要
確率戦の法則・集団戦の法則
こちらは業界トップの大企業が、圧倒的なブランド力と資本力を活かして市場を独占する戦略です。
1対多数の戦いでは「兵力の2乗」に比例して戦力が決まる
- 大企業は資本力やブランド力を活かし「数の力」で市場を制圧する
- テレビCM・大規模な広告戦略・大量生産によるコスト削減などで市場支配力を強化
- 市場シェアが1位の企業がますます強くなる「寡占化の法則」が働く
ランチェスター戦略を活用した成功事例
ソフトバンク
- NTTドコモに正面から対抗せず、ホワイトプランなどの独自プランでシェアを拡大。
- 局地戦(特定のターゲット層に集中)で徐々にシェアを拡大する。
ダイソン
- 大手家電メーカーと正面から競争せず掃除機の吸引力に特化。
- 高価格でも高性能・デザイン性にこだわり、特定のニッチ市場で成功する。
技術力×模範力
中小企業は属人的な技術力(職人技)を持っている場合がありますが、もし技術力において大企業とまともな戦いをすれば、局地戦でない限り確率戦の法則により負けます。
よって中小企業が勝負すべきは、市場の売れている商品やサービスを模範する能力です。それが大企業の参入していない局地戦であれば、尚更効力を発揮します。
大企業が参入しにくい業界とは、以下のような市場が挙げられます。
オーダーメイド製品
- 例:「カスタムスーツ」「オーダーメイドの靴」「オーダーメイド家具」
- 大企業のB2C業界は大量生産が前提の為、カスタマイズ製品には向かない。
小規模不動産仲介・リノベーション業
- 例:「空き家再生」「地元密着の不動産管理」
- 地域の事情をよく知ることが求められるため、大手が入りにくい。
D2C(Direct to Consumer)ブランド
- 例:「インフルエンサーブランド」「ハンドメイドアクセサリー」
- 変化が早く、少量生産のため大企業には向かない。
特定の趣味・マニア向け市場
- 例:「高級オーディオ専門」「レトロゲーム販売」
- 市場が小さすぎて、大企業が入っても利益が出にくい。
カスタム改造市場
- 例:「カスタムバイク」「カスタムカー」
- 法規制が複雑で、大手メーカーが対応しにくい。
CBD・大麻関連ビジネス
- 例:「CBDオイルの販売」「ヘンプ製品の専門ショップ」
- 日本ではまだ規制が厳しく、大企業が参入しづらい。
ギャンブル・アダルト関連
- 例:「競馬予想サイト」「アダルトグッズ専門店」
- 社会的なイメージや法規制の問題上、大企業が参入しづらい。
農業・小規模食品加工
- 例:「無農薬野菜の直売所」「クラフトビールの醸造」
- 地域密着型で、大規模展開が難しい。
地域限定の観光サービス
- 例:「地元の文化を活かしたガイドツアー」「古民家宿泊体験」
- 全国展開しにくく、個別の地域性が強い。
全社共通の戦略

次に、大企業や中小企業に限らずすべての会社にとって重要な戦略についてご紹介します。
顧客を知る
顧客は本音を言いません。例えばマクドナルドは、2006年にサラダマックを発売しました。これは同社が実施した消費者へのアンケートにおいて、ヘルシー・低カロリー・オーガニックを要望する声が多かった為です。
しかし実際にはサラダ類の売上は全体の2~3%に過ぎず、早々に販売を取りやめました。顧客の求めているものを突き止めるには、顧客の意見を聞くことではなく顧客を知ることが重要です。
論理×感情
できるマーケターや営業は、自社で取り扱う商品やサービスを買う必要性を感情で訴えることができます。
USJの森岡毅氏は2011年、クリスマスに流すTVCMにおいて、コアターゲットを「小さな子供連れファミリー」と定め子供と本気で楽しめるクリスマスはあと何回もないというキャッチコピーを作りました。
この言葉は現在まで語り継がれる程のインパクトを社会に与え、結果的に同年のUSJの年間来場者数は約880万人で、前年の2010年から約14%の増加となりました。
人は論理ではなく感情でその商品やサービスを買うかを判断します。
教育×人材
北の達人コーポレーションの木下勝寿氏は、社内教育ではなく採用する人材を重視するべきだと述べています。これは社内の教育システムを充実させても、人間の本質である人間性は変わらないという理由です。
また、もし自社の教育システムを整備する局面にいる場合、プレーヤーを2人採用するか育成する。それが第一歩だとも語っています。これには、教育と成果のリソースを2人で分散する目的があります。
最後に
今回は戦略についての実例と、会社規模に応じた相違点及び共通点を解説しました。


