機械系商社の工事立会って何をするの?立会者の役割と重層下請構造の要因

産業設備や付帯関連の製品を扱う商社の営業は、現地導入工事の立会をすることがあります。

本記事では、「工事立会者の役割」をテーマとし、工事の具体的な流れや重層下請構造の要因を解説します。

目次

機械系商社の工事立会

機械系商社の営業は、仕入先の設備を導入する際、得意先(顧客)の自動車工場や部品工場での工事に立会します。

主な役割

営業は工事で実作業をしないものの、成果物の品質を確認・指導し、作業者の安全を守ることが求められます。

  • 安全管理
    • 現場の安全対策が適切に実施されているかを確認し、労働災害の防止に努めます。​
  • 品質管理
    • 施工が設計図や仕様書に基づいて正確に行われているかを確認します。​
  • 進捗管理
    • 工事が計画通りのスケジュールで進行しているかを監視し、必要に応じて調整を行います。​

工事の流れ

STEP
工事書類作成

大手得意先の工場では、工事内容を記載する工事書類を工事前に作成し、承認回覧します。

工事書類の主な記載内容

  • 工事名(タイトル)
  • 工事工程表(氏名・連絡先・人数・作業内容・入場時間)
  • 特記事項(火気・危険物・クレーン・重機・撮影などの有無)

工事書類を作成するため、この内容はあらかじめ施工会社へ問い合わせしましょう。

この他にも、顧客側で事前に準備してほしい事項(トライ用のテストピースや支給部品など)があれば顧客へ共有します。

STEP
工事書類印刷

書類の承認回覧を終えた後、必要に応じて書類を印刷し、工事当日に持参します。

施工会社とは、待ち合わせ場所・時間・連絡先を共有し、商社側で準備するものがないか(工事看板など)も確認しましょう。

工事看板とは?

工事看板とは、工事中にどのような工事が行われているかを周知する目的で、承認された工事書類を入れる看板を指します。

工事管理用垂れ幕|モノタロウ

STEP
工事開始前

工事当日は、作業開始前に関係者全員とKYミーティングを行います。

危険ポイントの確認・対策・作業工程を参加者に周知し、全員の認識を合わせます。

関係者とは、得意先の立会者・元請の立会者(商社の営業)・作業責任者・作業員などです。

STEP
工事中

工事中は、作業責任者及び作業員が不安全行為を行っていないか監視します。

特に一人作業をする者、危険作業(高所・火気・クレーン・重機など)をする者は注視しましょう。

不安全行為を行っている場合には、その確証がなくても作業を中断させ指摘・指導する必要があります。

ココがポイント!

作業責任者・作業者の不安全行為は、工場側の安全パトロールから指摘されることがあります。

特に大手メーカーの工場は、指摘した業者に関するルールを明確に決めており、工事を中断し顛末書の提出を求められることもあります。

STEP
工事後

工事後は、成果物の品質を確認し、必要に応じて改善を依頼します。

但し、品質も重要ですが、優先すべきは作業者の安全であることも意識しましょう。

残業が長く続きそうな場合や、休憩が適切に取れていない場合、別の工事日程を調整することも必要です。

立会ができない時

産業設備などの導入工事は、一般的に工場の操業停止日(休日)に行います。

大型案件は長期連休などの長期間に及ぶケースも多く、平日に発生する営業のタスクとの両立が難しい側面もあります。

どうしても立会ができない時は、現場代理人を選任し、現場の指揮・指導を任せる方法もあります。

現場代理人とは

現場代理人とは、受注者の代表として工事現場の指揮・指導を選任された者です。

現場代理人を立てれば、商社の営業は受注活動や中間管理にリソースを集中することができます。

現場代理人の選任要件は、受注者との雇用関係の規定がなく、発注者が許可する場合は外注することも可能です。

現場代理人の要件等は建設業法で規定されておりませんので、確認が必要な場合は各注文者へご確認ください。

建設工事の適正な施工を確保するための建設業法|国土交通省 より(11.現場配置技術者④-4(現場専任制④))

現場代理人のご相談・ご依頼は、弊社 新野商事へお問い合わせください。

安全ルールの種類

安全ルールは、法令で定める「労働安全衛生規則」が代表的ですが、工場が定める「安全マニュアル」が存在することもあります。

法令上のルールは施工会社も認識していますが、工場側のルールは工事実績がない限り把握できません。このような工場側の安全ルールは、事前に商社が施工会社へ説明しましょう。

参考文献

建設法上の区分

商社の営業が責任者として工事に立会する場合、法令上定められた責任者に分類されるわけではなく、あくまで工場のルールに基づいて立会する概念となります。

法令上の責任者の種類については、以下のブログで解説しておりますので、ぜひ合わせてお読みください。

危険ポイントの一例

労働災害は、本来のルールを守れば防げるものが多いため、不安全行為に対しては厳格に指導しましょう。

  • 声掛け・確認不足による
    • 設備の挟まれ・巻き込まれ
    • 積荷資材の倒れ・環境事故
    • 電気作業時の感電・アークフラッシュ
  • 安全保護具未着用による
    • 高所からの転落
    • 火気使用時の火傷
    • 閉鎖空間の酸欠・有毒ガス
  • 工事看板未掲示による
    • 重機・クレーン搬出入時の接触
    • 上下作業での工具落下による怪我
    • 危険物作業・粉塵が舞う現場・火気作業での火災・爆発

下請構造とは

下請構造とは、本来「工事が自社で完結できず、下請に依頼する」ことを繰り返した結果、起こる現象です。

責任範囲の変化

基本的に、下請構造がどれだけ大きくなっても、顧客・元請が担う責任の範囲は変わりません。

例えば三次下請の場合、一次・二次業者の責任内容は変わらず、異なるのは業者の分散による施工範囲の縮小です。

元請業者の役割

主な役割:工事全体の管理責任者

  • 全体の工程・品質・安全の管理。
  • 下請業者との契約・指導・監督。
  • 作業間調整・安全教育・災害防止協議会の運営。

一次下請業者の役割

主な役割:自社作業と二次下請業者の管理

  • 元請との契約に基づき、特定の工程を担当。
  • 二次業者への発注・作業指示・現場調整。
  • 自社と二次業者の作業員に対する安全教育。

二次下請業者の役割

主な役割:同上

三次下請業者の役割

主な役割:自社作業

  • 二次業者からの指示に基づいて工事を実施。
  • 現場の安全ルール・作業手順・品質基準に従う。
  • 作業日報・進捗報告・安全教育の受講。

下請構造が起こる要因

下請構造が起こる要因は、餅は餅屋の概念と、限定された取引口座が関係しています。

餅は餅屋

「餅は餅屋」という言葉にもある通り、自社が不得意な領域は、他社に任せる会社が多くあります。

餅は餅屋とは?

餅は餅屋とは、「どんな物事でも、その道の専門家に任せるのが一番良い」という意味のことわざです。ビジネスでは、自社で全てをこなそうとするのではなく、専門外のことは外部業者に外注する方が効率的で、かつ最終的な利益が上がるという意味で使われます。

作業内容の一例

例えば産業設備を工場に導入する際、以下のようなタスクが発生し、それぞれで対応できる業者が異なります。

スクロールできます
作業対応者会社
顧客の要望をヒアリングする営業商社
設備を設計する設計設備メーカー
購入品を手配する購買設備メーカー
支給品を手配する営業商社
支給品を運搬する運搬業者下請
設備を製作する製造設備メーカー
設備を調整する品質設備メーカー
設備をバラす製造設備メーカー
設備を運搬する運搬業者下請
設備を横引きする重機業者下請
導入場所の清掃をする清掃業者下請
導入場所のケガキをする基礎業者下請
導入場所へエア配管を延長する配管業者下請
導入場所へ電気配線を延長する電気業者下請
導入場所へ通信ケーブルを延長する電気業者下請
設備を復旧する製造設備メーカー
設備を精度調整する品質設備メーカー
  • 支給品とは?
    • 設備メーカーが購入できない製品や、金額が上がる製品(取引口座がないなど)がある場合に、顧客・商社が支給する部品です。
  • 横引きとは?
    • 納入先で横方向に重量物を運ぶ作業を指します。重機などを用いて工場内で横引きし、設置箇所に運搬します。
  • ケガキとは?
    • 自動ラインでは設置場所が数ミリ単位で決まるため、納入場所の床にあらかじめ線や点を描く作業を指します。

取引口座の有無

大手企業は与信管理の関係上、同じく大手企業との取引口座で固定することが多く、地場メーカーや中小企業との直接取引を避ける傾向にあります。

一部の企業が直接取引を独占すれば、リソース不足や餅は餅屋の概念により、そこから発注する仕事の下請構造も、より大きくなる可能性が高まるのです。

下請構造のデメリット

下請構造のデメリットには、「構造上のコスト増加」と「責任の所在の曖昧さ」があります。

構造上のコスト増加

重層下請構造は一般管理費の増加に繋がるため、下請業者の数が増えるほど顧客のコストが増加し、対して増加した分の費用が最下層に直接還元されることはありません。

さらに顧客がコスト増加の理由を探っても、重層下請構造による管理費の増加は正当な理由とは認められにくく、コスト増加の要因もブラックボックス化しがちです。

責任の所在の曖昧さ

例えば三次下請が現場での不安全行為で指摘された際、指摘されるのは元請であり、改善するのは三次下請です。

本来であれば、一次・二次下請も教育不履行で責任を負うべきですが、実際には責任の重さが飽和してしまいがちなのが実情です。

参考文献

最後に

今回は、「工事立会者の役割」をテーマとし、工事の具体的な流れや重層下請構造の要因を解説しました。

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