労働者・役員・企業オーナーには、報酬形態と権限に明確な違いが存在します。
本記事は「企業オーナーの優位性」をテーマとし、株式会社の概要と雇われ社長との違いについて解説します。

- 「労働者は雇用契約」「役員は委任契約」であり、役員は就業規則の適用外。
- 企業オーナーはその持株比率により、役員の任命や役員報酬を定めることができる。
- 株式を保有しない人でも役員(代表)に任命することができ、これを「雇われ社長」と言う。
企業オーナーの優位性
株主はその会社の持株比率により、企業オーナーとして事実上「会社を所有」することができます。
株式発行比率の過半数(51%以上)を保有すれば、自分を役員に任命し、所定労働時間の制約が無い中で自分が決めた役員報酬を得ることもできるのです。
新野くん好きな額の役員報酬が貰えるって最高だね!何か制約はないの?



もちろんあるよ。株主であっても法の上に立てるわけでは無いから、あまり好き勝手すると「会社を害する」と判断されて訴えられる可能性があるんだ。
役員と労働者の違い
私たち労働者は、会社と雇用契約を結ぶことで、就業規則に定められた時間を対価とし報酬を得ています。
一方で、役員は会社と「委任契約」を結び、労働者に適用される就業規則とは別枠で管理されます。
この委任契約とは、税理士に確定申告を依頼したり、登記を司法書士に依頼することも同様で、「業務の遂行」自体が目的と定義されます。
参考文献:会社法|総務省e-Gov
企業オーナーの権限
| 持株比率 | 権限 |
|---|---|
| 100%(全株保有) | すべての決議を単独可決できる |
| 66.7%以上 | 特別決議を単独で可決できる |
| 51%以上(過半数保有) | 普通決議を単独で可決できる |
| 33.4%以上 | 特別決議を単独で拒否できる |
| 1%以上または300個以上の議決権 | 株主提案権を行使できる 取締役会設置会社で、かつ6ヶ月前から株式保有する場合 |


特別決議では、M&Aなどの会社の構造に関わる重要事項を決定します。この決議を可決するには、議決権の3分の2以上の賛成が必要です。したがって、持株比率が66.7%以上であれば、特別決議を単独で可決することができ、逆に3分の1以上の持株比率を有する株主は、特別決議を単独で阻止することができます。
株主総会における「普通決議」
可決要件
- 出席株主の過半数の賛成
- 議決権を行使できる株主が過半数出席
決議事項
- 取締役や監査役の選任・解任
- 役員報酬の決定
- 決算書類の承認
- 剰余金(配当金)の処分
- 取締役の責任免除
株主総会における「特別決議」
可決要件
- 出席株主の3分の2以上の賛成
- 議決権を行使できる株主が過半数出席
決議事項
- 定款の変更
- 株式譲渡制限の設定・変更
- 株式併合・株式分割
- 事業の譲渡・譲受
- 合併・会社分割・株式交換・株式移転などの組織再編
- 解散、清算人の選任



ちなみに、議決権がない株式も存在するよ。例えば、前澤友作氏による「カブアンド」が代表例だね!
参考文献:カブアンド種類株式にはなぜ議決権がないのか?|カブアンド


株主総会はすべての株式会社での実施が義務付けられていますが、取締役会は非公開会社では任意設置となります。取締役会の決議事項は、業務執行に関する意思決定や、取締役の監督・代表取締役の選定/解職などに限定されます。
日系企業の役職一覧
一般的な日系企業における、それぞれの役職の報酬形態と役割を序列順に見てみましょう。
| 報酬形態 | 役職名 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 役員報酬 | 代表取締役社長 | 最高経営責任者 |
| 役員報酬 | 取締役副社長 | 社長補佐 |
| 役員報酬 | 専務取締役 | 特定の部門や業務の統括 |
| 役員報酬 | 常務取締役 | 日常業務の管理・監督者 |
| 給与 | 執行役員 | 役員と従業員の橋渡し |
| 給与 | 本部長 | 複数部門の統括 |
| 給与 | 部長 | 部門の責任者 |
| 給与 | 次長 | 部長補佐 |
| 給与 | 課長 | 課の責任者 |
| 給与 | 係長 | 課内の小グループにおける責任者 |
| 給与 | 主任 | 一般社員の指導や現場リーダー |
| 給与 | 一般社員 |
この他にも「会長」「相談役」「顧問」「参与」などの、法的役割が無い名誉職も会社により設けられています。
家族経営の会社では、会長が社長同等の役割を持つこともありますが、この場合は社長の序列(役割)が下がり補佐的な役回りとなります。
雇われ社長とは
役員に就任するには、株主総会の「普通決議」にて過半数の賛成を経て選任される必要があります。
そしてこの選任される条件に、持株比率はありません。
つまり、株式を保有していない人でも取締役・役員に就任することができ、これが社長職の場合は「雇われ社長」となります。(取締役会設置会社では取締役会で選任)


役員報酬の金額は、会社法に基づき株主総会の「普通決議」で決定されます。役員報酬には法律上の上限がない反面、役員は労働法上の「労働者」ではないため、残業代や有給などは発生しません。
企業オーナーの役割と報酬形態
企業オーナーは、あくまで会社の所有者であり、例え持株比率100%であっても実務を行う義務はありません。
中小企業では企業オーナーが「代表取締役社長」を兼務することもありますが、大企業では分離している場合が一般的です。
- 企業オーナーの役割
- 取締役が不祥事を起こした際の責任を負う。
- 但し出資額の範囲まで。会社が損失を出しても、追加で負担する義務はない。
- 企業オーナーの報酬形態
- 株式の配当や売却益。
- 自身を役員に任命した場合は役員報酬も取得可能。



企業オーナーは「普通決議」で取締役を解任する権利を持ちながらも、役員の不祥事に対しては有限責任なんだ。
株式の評価方式
設立時の1株当たりの金額は、出資した「資本金 ÷ 株式発行数」となり、例えば資本金が300万円で1株当たりの金額を1万円と設定した場合、発行株式数は300株となります。
設立後の会社における株式の評価方式は複数あり、例えば純資産価額方式で評価する場合、会社の純資産の増減により株価が変動します。
純資産価額方式の計算式
(総資産評価額 − 負債額 − 評価差額に対する法人税等相当額) ÷ 発行済株式数



会社の価値は、会社規模や価値を算出する目的によって異なるんだ。投資家の需給・期待値で価格が変動するんだね。
| 種別 | 主な評価方式 |
|---|---|
| 上場株式 | 終値法、平均値法 |
| 非上場株式 | 類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式 |
| M&A・投資評価 | DCF法、マルチプル法、収益還元法など |


「非上場」とは、株式を市場に公開していない状態を指します。非上場株式は「未公開株」とも呼ばれ、売買の対象に含まれていません。一方「上場」すると、東京証券取引所(プライム・スタンダード・グロース)などの市場で株式を売買できるようになります。
役員報酬の決め方
将来上場を目指す場合、企業オーナーは役員報酬を低めに設定することが一般的です。
非上場株式の評価は「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」に基づくことが多く、株主としては累進課税の役員報酬で資産を築くより、新規上場時の株式売却益で資産を築いた方が効率的なためです。
役員報酬と株式売却益の税率
| 区分 | 対象 | 税率 |
|---|---|---|
| 役員報酬 | 給与所得 | 累進課税(最大55%) |
| 株式売却益 | 譲渡所得 | 20.315%(一律) |
- 役員報酬:給与所得として「所得税の累進課税」が適用されます。最高45%+住民税10%
- 株式売却益:原則として「申告分離課税」となり、一律20.315%となります。
会社の出口戦略を事業承継としている場合、承継者に株式評価額に応じた相続税または贈与税が現金一括納付で課されるため、株式評価額を下げる目的で役員報酬を多く設定する会社も存在します。



上場を考えていない中小企業は、年間の会社利益を800万円以下にすることが多いんだ。法人税率「15%と23.2%」の境目ラインだね。
参考文献
最後に
今回は「企業オーナーの優位性」をテーマとし、株式会社の概要と雇われ社長との違いについて解説しました。










