商社の営業職は、担当(国内・海外)や取引先の規模により業務内容が異なりますが、ストレス要因に関してはある程度共通しています。
本記事では、実際に商社の営業マンをしている立場から、「商社マンが辛いこと」や「転職・就職前に確認するべき会社選びのチェックリスト」を解説します。
第1位|板挟み
商社マンが毎日のように経験するのが、三社間(社内・得意先・仕入先)からの板挟みです。これが最も辛い理由は、ほとんどのトラブル原因が自分でないためです。
仕入先責任で顧客からクレームが発生した際、怒られるのは仲介の商社であり、説明責任・問題解決・再発防止を含めたすべての処理を行います。
また、得意先責任で仕入先からクレームが発生した際も同じです。つまり、コントロールができないクレームが毎日のようにあり、その落とし所を探るのが我々の仕事でもあります。
新野くん「毎日のように」は誇張してるんじゃないの?



いや、そうでも無いよ。トレーディングを主にする商社は仲介手数料で稼いでいて、その物件数はとても膨大なんだ。
入社当初は、ほとんどの人が社内・得意先・仕入先からの板挟みを真摯に受け止め対応を迫られます。
しかし、数年が経過するとある程度のトラブルは経験し終え、「あ、今回はこのパターンね」と思うようになります。その段階になるとライン作業のようにトラブル対応をするため、いわば慣れるものでもあります。
具体例:見積もり金額を間違えた
仕入先が見積もり金額を間違える
→得意先が注文書発行後に判明
→得意先怒る
→仕入先対応できない
→社内にクレームが入る
→上司怒る



いや、これ無理ゲーでしょ



そうだね。見積もり金額の実績・相場のチェックには限界があるし、最終的には仕入先の選定が甘かったと怒られるんだ。
得意先が注文書の再発行を了承しない場合は、最終的に商社が粗利益のバッファ分から差額を捻出することもあります。


粗利益のバッファとは、粗利益から会社で決められている最低粗利率を引いた分の金額を指します。得意先・仕入先に落ち度がないにも関わらず、追加費用が発生した場合、仲介である商社が負担する場合があります。


具体例:指定納期が間に合わない
納期が指定納期に間に合わない
→得意先が注文書発行後に判明
→以下同



え、この場合はどうするの?



もちろん最短納期で得意先に了承頂くしか無いね。この最短納期は文字通り最短で、商社が走って届けに行くこともあるよ。
第2位|年功序列制度
商社は商流の仲介手数料で稼ぐビジネスモデルであり、昇給制度も日本特有の年功序列を採用している会社が一般的です。
どんなに凄腕の営業マンであっても、役職が同じであれば報酬に大きな差は生まれません。かつ昇給(役職)も年齢を前提とした成果で評価されるため、成果と報酬が紐づかず、やる気を無くす社員も少なくありません。


商品やサービスが生産者から消費者に届くまでの流れのことを、商いの流れ(略して商流)と呼びます。


大手商社の多くは、戦前から歴史のある商流を持っており、その利権を持って資源権益を得るための事業投資も行います。
商流は単なる物流だけではなく、取引契約や情報のやり取り、支払いなどのすべての流れがこの商流に沿って行われます。
第3位|セルフブラック
商社の中には、「残業代なし・各種手当なし、基本給が低く営業手当で水増し」の会社が現在でも存在しています。これは既存の商流が確立しており、営業が頑張らなくても引き合い(案件)がくる会社にありがちな現象です。
このような商社は新規案件を獲得することが比較的容易な反面、会社側のバックサポートが対応しておらず、頑張れば頑張るほどセルフブラック状態となります。



得意先も大手だから、既存の商流だけでも年間数十億規模の売上があるんだ。
第4位|個人商店の集まり
組織のビジョンが昭和時代から変わらないような会社は、上司も実質放置状態で、横の人がどこで何やっているかわからない個人商店の集まりになります。
上司からは放置されるため自由裁量でプロジェクトを進められるメリットはありますが、営業スキルを磨きたい人や、若いうちから年収1千万以上を稼ぎたい人は転職していく実態もあります。
第5位|議事録が難しい
商社のトレーディング部門を担当する場合、プロジェクトごとに得意先・仕入先・商社の三社以上が絡むため、情報伝達の相違を防ぐ目的で頻繁に打合せを行います。
- 要求仕様打合せ
- 見積もり仕様打合せ
- 注文書発行後の打合せ
- 中間打合せ
- 納入前打合せ
- 納入後打合せ
- 検収打合せ
情報伝達の少しの相違は、後々大きな相違に発展します。よって、打合せ議事録はその正確性が最も重視されます。
議事録は主に商社が記述しますが、得意先・仕入先はその分野の専門家であり、技術的な専門用語が飛び交うため、途中で自分が何を書いているのかわからなくなることが多々あります。
議事録の書き方については以下のブログで解説しておりますので、ぜひ合わせてお読みください。


商社へ入社する前に確認すべきこと
商社は顧客のプロジェクトを円滑に進めることが求められます。
プロジェクトのスケジュールに合わせた働き方をするため、残業代や手当・フレックス制度の有無などを事前に確認しましょう。
残業代や手当の有無
- 残業代は出るか。
- みなし残業制度はあるか。
- 休日・深夜・早朝の出勤があるか。
- 営業成績と昇進・ボーナスは紐づいているか。
- 各種手当の金額。(国内・海外出張、休日出勤)
工事関連(機械・建設)を請け負う商社では、得意先の操業計画を基準に工事を行うため、休日・深夜・早朝の出勤があります。また海外担当の場合、現地の時刻基準で打ち合わせするため、こちらも休日・深夜・早朝の出勤があります。
入社前にはこれらの項目を必ず確認し、提示された給与と紐付けて考えましょう。
みなし残業制度とは
みなし残業制度とは、実際の残業時間に関わらず、あらかじめ決められた残業代を手当として支給する制度です。本来営業職などの外出が多い業務で実労働時間の把握が難しい場合に、経理負荷を軽減する目的で適用されます。
別名「固定残業代」とも呼ばれ、労働政策研究報告書によれば約2割以上もの労働者が固定残業代制のもとで就業しているとされます。
みなし残業で発生する固定給は、基本給ではありません。ボーナスや残業代は基本給に割増率をかけて計算されますが、固定給は計算に含まれないのです。
よって、例え営業成績とボーナスが紐づいている会社でも、基本給が低ければ総額も低くなります。
直行・直帰やフレックスの有無
- 直行・直帰は認められているか。
- フレックス制度を採用しているか。
- 携帯や社用車にGPSは付いているか。
- 営業・運転日報の提出義務はあるか。
- ある一定の残業時間を超えたら日報の提出義務はあるか。
商社は良い意味でも悪い意味でも働く時間の自由度が高く、イレジュラー対応が主となるため、それを前提で勤務先を選ぶ必要があります。
競合他社と話す中でも、直行・直帰が認められている会社は多々ありますが、フレックス無し・GPS有り・日報義務有りの会社は現在でも存在します。
最後に
今回は、実際に商社の営業マンをしている立場から、「商社マンが辛いこと」や「転職・就職前に確認するべき会社選びのチェックリスト」を解説しました。
商社は、現場の商売に最前線で関わることができるため、お金を稼ぐことが好きな人や、人と関わるのが好きな人は非常に向いている職業です。
今回はデメリットのみに焦点を当てましたが、それに匹敵するほどの楽しさがあることもまた事実です。










