- 危険予知の概要
- KYMとは
- 混在作業の危険性
- KYMのやり方
- 工事書類の種類
建設業や製造業など工事に関わる業界では、KYT・KYMなど危険予知の概念が存在します。
本記事では、工事におけるKY(危険予知)の概要から、工事書類の種類について解説します。
KYTとKYMの違い
KYT は日本語の頭文字をとった略称であり、「危険(Kiken)・予知(Yochi)・トレーニング(Training)」を意味します。
KYT(危険予知トレーニング)では、安全教育・危険予知訓練の場でイラストを用いた事例を使い、話し合いにより危険感受性を高める「教育・訓練」を行います。
一方、KYM(危険予知ミーティング)は、「実際の現地作業開始前」に関係者全員(顧客・商社・関連メーカー・職人)で集まり、当日の危険予知と対策を確認します。
くろひつじKYMは、トレーニング(Training)がミーティング(Meeting)になった頭文字の略称だね。
危険予知の目的
KY(危険予知)をする目的は、「予測できる危険な行動とその対策」を増やし、「予測していなかった事故を未然に防ぐ」ことです。
危険な行動と対策を事前に予測し、かつ心身共に健康であれば、人はそもそも危険な行動はしないという行動原理に基づくものです。
KYMとは
KYMは現場の数だけ存在するため、実際に現場で仕事をする人たちにとって身近なのはKYMの方です。
KYMは作業開始前に行う
KYMは現地作業開始前に行いますが、この「作業開始」の定義は「積荷・工具の荷下ろし前」や「荷下ろし後」など、現場によって異なります。
KYM前に作業を開始してしまうとルール違反となり、顧客・元請の担当者に多大な迷惑をかける可能性があるため、必ず事前に顧客・元請へ確認しましょう。
関係者全員でKYMを行う理由
建設工事に該当する工事は、以下の29種類があります。
土木⼀式工事、建築⼀式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板⾦工事、ガラス工事、塗装工事、防⽔工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、⽔道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事
参考文献:建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者|国土交通省
これらの工事の多くは、別々のメーカー・職人が同じ現場で作業する「混在作業」が多いため、お互いの作業工程・危険ポイントを把握することが事故予防の第一歩なのです。
混在作業の種類
例えば、既存の工場に新規生産ラインを作る「機械器具設置工事」であれば、以下のような混在作業が発生します。


- 一次電気工事(一次電気業者)…設備付近に電源を延長する。
- 一次エア配管工事(一次配管業者)…設備付近にエア配管を延長する。
- 二次電気工事(二次電気業者)…設備に電源を供給する。
- 二次エア配管工事(二次配管業者)…設備にエアを供給する。
- 搬入・横引き工事(運輸業者)…設備を運搬・搬入する。
- ケガキ・墨打ち工事(基礎業者)…設備の設置位置に印を付ける。
- コンベア関連工事(コンベアメーカー)…運搬用にバラしたコンベアを復元する。
- ロボット関連工事(ロボットメーカー)…ロボットの設置・復元・教示作業をする。
新規工場を建てる工事であれば、上記の他に建屋工事・デッキ工事・空調工事などが行われます。
また工事は各業者が入れ替わり順番に行うわけではなく、上下作業などの危険性・作業スペースのバッティングが無ければ基本同日に行います。
一次側と二次側の違い


「機械器具設置工事」の一次側・二次側とは、一般的に以下のような区分で分かれます。


- 一次側:工場から設備まで供給する側
- 二次側:設備から個々の機械まで供給する側
一次側は工場の公共インフラで、建物全体の根幹にあたる部分です。よって、工場の指定業者や専門業者のみが施工を許されます。
一方、二次側はあくまで所有者(オーナー)の財産であり、担当者レベルで比較的自由に業者を選定して依頼できます。
危険ポイントの一例
一次側業者+二次側業者
- 事故:落下物との接触事故
- 要因:上下作業・エリア区画不足


一次側のエア配管工事中、工具・部品を誤って下に落としてしまう。作業エリアの区画が不十分で、二次側の作業者と接触する。
一次側業者+二次側業者
- 事故:二次配線作業者の感電
- 要因:工程共有・声がけ不足


一次側の電気工事が終了し、二次側の作業者へ伝達せず通電。動力遮断中と思い込んでいた二次配線作業者が感電する。
運輸業者+その他業者
- 事故:搬入作業時の挟まれ
- 要因:工程共有・エリア区画不足


重量物をフォークリフトで搬入中、前方に人がいることに気づかず衝突する。
ロボットメーカー+コンベアメーカー
- 事故:ロボットとの接触
- 要因:工程共有・声がけ不足


ロボットの教示作業が終了し、各個動作確認中に他社業者と接触する。
KYMのやり方
現地工事は国内・海外に限らず不慣れな環境で行うことが多いため、作業開始までの手順を省略せず、必ず顧客・元請・上司と連携しながら進めましょう。
工事看板の準備
建設業・製造業などの業界に関わらず、現地工事を行う際には工事看板を掲げます。
工事看板には工事内容を記載した工事書類を掲示し、周囲に当日の工程・危険ポイントを周知することが目的です。
KYMの順番
現地工事開始前は、関係者が集まって「当日の作業内容・危険ポイント」を共有します。
関係者は顧客・元請・職長または現場代理人が招集するので、あらかじめ「KYMの開始時間」と「現地工事開始前の定義」を確認しましょう。
工事書類の中には、顧客や元請のサイン欄もあります。内容を確認頂き、必要な箇所にサインをもらいましょう。
先に作業を開始しないよう注意。
視覚的に共有できるよう、工事書類の「工程表」や「KYシート」を準備しましょう。
トイレ・喫煙所の場所や各業者の作業スペース、緊急時の対応方法などが説明されます。
現場により、顧客・元請・職長または現場代理人が「本日の指差し呼称は保護具着用ヨシでいきましょう」など全体のスローガンを決めることがあるため、全体に倣って指差し呼称を行いましょう。
指差し呼称の重要性
KYMや実作業の場では指差し呼称を行う場面が多々ありますが、これは過去の事故発生率によるものです。
1994年、財団法人(現、公益財団法人)鉄道総合技術研究所が行った効果検定実験では、「指差し呼称を行わなかった」場合の操作ボタンの押し間違いの発生率が2.38%であったのに対し、「指差し呼称を行った」場合の発生率は0.38%でした。
指差し呼称だけでヒューマンエラーは根絶できませんが、指差し呼称は「意識レベルを上げ、確認の精度を向上させる有効な手段」であるとされています。
工事書類の種類
工事看板に入れる工事書類の種類は、現場により異なります。
何を掲示すべきかは、工事前に顧客・元請へ確認しましょう。一例として、代表的な工事書類は以下の3種類です。


- 法令により現場へ掲示する書類
- 建設業の許可票
- 労災保険関係成立票
- 施工体系図 ※作成義務のある工事のみ
- 再下請負通知書の提出案内 ※施工体制台帳作成工事のみ
- 【主に製造業】顧客のルールにより掲示・提出する書類
- 誓約書
- KYシート
- 施工計画書 ※工程表含む
- 施工体系図
- 入場者名簿
- 緊急連絡網 など。
- 【主に建設業】グリーンファイルより掲示・提出する書類
- 誓約書
- 安全MT報告書
- 安全衛生計画書 ※工程表含む
- 施工体系図 ※作成義務のある工事のみ
- 施工体制台帳 ※作業員名簿含む
- 新規入場時教育報告書 など。
参考文献:労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則|厚生労働省
グリーンファイルとは、主に建設業で活用されるグリーンサイトからダウンロードできる工事書類です。
また大手自動車メーカーや大手ゼネコンが顧客の場合、顧客が定める工事書類も存在します。
この他に、火気作業・高所作業・持込重機・危険物持込・撮影などがある場合、それに応じた工事書類があります。
工事書類が重複する場合
施工体系図や作業員名簿など、法令ルール・顧客ルール・グリーンファイルで重複関係にある書類は、「法令ルール→顧客ルール→グリーンファイル」の順で優先し統一できます。
統一する書類は、事前に顧客・元請へ報告しましょう。
施工体系図は「すべての工事」で法定掲示ではない
施工体系図は、「施工体制台帳の作成義務がある工事」で掲示します。
民間工事の場合
発注者から直接工事を請け負った特定建設業者が、工事のために締結した下請契約の総額が下記の金額以上となる場合に必要です。
- 建築一式工事以外:5,000万円以上
- 建築一式工事:8,000万円以上
公共工事の場合
元請業者が下請契約を締結した場合は、下請金額に関わらず施工体制台帳と施工体系図が必要です。
参考文献:建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者|国土交通省
最後に
今回は、工事におけるKY(危険予知)の概要から、工事書類の種類について解説しました。









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