頑張ったら報われる会社の評価基準とは?人事評価制度の目的と作り方

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組織マネジメントにおいて、評価基準の精度は「頑張ったら報われる」組織作りに直結し、組織全体のパフォーマンス向上に繋がります。

本記事では、「頑張ったら報われる会社の評価基準とは」をテーマとし、組織マネジメントについて解説します。

目次

公平さと透明性

まず組織を動かすには、評価制度の「公平さ」と「透明性」が前提になります。

透明性とは、社員が自社の評価制度を認知していることを指し、公平さとは上司が社員を差別せず評価の基準に正当性があることを指します。

この前提条件がクリアしていなければ、いくら評価基準の精度を上げても意味を成しません。

評価基準を定める

ハーバード大学のジョン・P・コッター教授は、マネージャーの役割は「将来のビジョンを共有し、方向性を定めることから始まる」と述べています。

これは評価基準を定める方法とも通じており、組織の目標を明確にすることで、自ずとそのゴールに準じた評価基準が定まります。逆に目標が曖昧な組織では、結果に対する価値を見出すことはできません。

例えば企業のトップが「5年後に市場シェア1位になる」というビジョンを掲げ、それに向けた戦略を打ち出せば、組織全体が同じゴールに向かって動き出し、結果に対する評価基準が明確になります。

評価基準の正当性

通常、評価基準は複数の項目で構成されますが、項目の数や内容はシンプルであればある程良いとされます。

実際、評価基準の設計は「KPIの数を絞り込み、重要なものにフォーカスせよ」というのが人事専門家の推奨するところです。

もし正当性が疑問視されるような項目が一つでもあれば、例えその項目が総合点に与える影響が低くても、社員のやる気が低下します。

現状、多くの会社員は自社の評価に不満を抱えており、ギャラップ社の調査では「自社の人事評価プロセスが公平・透明だ」と強く感じている会社員はわずか22%に過ぎません。

参考文献:2% of CHROs Think Their Performance Management System Works|GALLUP

現場を知らない評価基準

例えばB2Bのルート営業職では、「粗利率」や「伸張率(前年同期・半期比)」を評価に入れている会社が存在します。

しかし、B2BビジネスはB2Cと比べ顧客のプロジェクトの起伏に左右される側面があり、前年同期比で好業績を出し続けるのは営業個人の努力範疇を逸脱します。

また粗利率は上げ続けると顧客の反感を買ってしまうため、結局は会社の意図とは相反し、どこかで粗利率を意図的に下げるなどして営業個人がコントロールする必要があるのです。

評価基準は、その組織や職種により内容を分ける必要があり、そのためには現場の仕事(特性)を知ることが重要です。

社員が評価設定に参加する

評価基準に透明性を持たせるには、社員自身を目標設定に参加させるのが有効です。目標設定への参加は評価基準への納得感を生み、公平な評価への土台となります。

この場合、目標に測定可能な指標を用いると、目標と評価の客観性が増し納得感が高まります。(例えば「売上増加」を「今期中に売上10%増」に変換するなど)

もし偏見や部署間の不公平が生じやすい項目が生じた場合には、評価者の視点を増やす(上司・部下・同僚・顧客など)ことで多角的な意見をフィードバックすることができます。

日本の評価制度

日本は未だ多くの企業が年功序列制度を採用しており、そのような会社はいくら評価基準を満たしても、年齢(階級)上位の人より報酬を多く貰うことはできません。

例えば日本の製造業では、20~24歳を起点とした場合、50代の賃金水準が約1.7倍に達するのに対し、欧米の製造業は約1.3倍であり、日本は顕著に高い傾向にあります。

年齢階層別賃金格差の国際比較(男性生産労働者、製造業)

日本、米国、欧州諸国の報酬制度|国際労働研究所 陳玉平

成果物より協調性

社員は報酬のために働くという前提のもと、年功序列制度を採用する会社は成果物より忠誠心や協調性を優先していると言えます。

年齢に応じた処遇を与えることで、会社への帰属意識や安心感を高め、チームワークや協調を促進しているのです。

基本的に何を優先するかはその組織の自由ですが、もし成果物を優先する組織にしたい場合には、報酬に対する評価制度の優先順位は上げる必要があります。

成果主義のデメリット

一方で報酬に差を付け過ぎてしまうと、社員が個人成績ばかりに固執し、社内の風通しが悪くなる可能性があります。

属人的な成果を避け社員同士の成果に再現性を持たせるには、ある程度のチーム評価をもたらすことが必要です。

日本人は個人主義指数が低く、長期的志向を持ち不確実性を嫌う特徴があるため、チーム内での調和や相互支援を得意としています。

国別比較ツール|The Culture Factor

なぜ成果主義へ移行できないのか

日本の伝統的な企業の多くは、高業績者への報奨が相対的に少なく、インセンティブ効果が限定的です。

多くの人々がこのような制度に不満を持ちながらも、成果主義型の賃金形態に移行できないのは、日本人特有の長期的志向不確実性を嫌う傾向が関係しています。

成果主義型の賃金形態は、特に35歳以上の社員にとってはリスクが大きいのです。

成果主義型のリスクとは?
  • 評価基準が不当な会社に入社した場合、賃金が落ちる可能性がある。
  • 会社を転職する場合、特に35歳以上の場合は賃金が落ちる可能性がある。

厚生労働省の令和6年度 転職者実態調査では、35歳~49歳の転職者の約2割が賃金を下げ、約4割が賃金を上げています。この数値で成果主義の会社へ転職する人は、それほど多くないのが実情です。

くろひつじ

いわゆる『現状維持バイアス』にかかりやすいってことだね。

令和6年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省

心理学的視点

評価制度を設計する際には、従業員のモチベーションとパフォーマンスに関する心理学を理解しておくと便利です。その代表的なものには、「自己決定理論」と「期待理論」があります。

期待理論

ココがポイント!

組織の期待理論では、人が努力するかどうかは以下の3要素によって決まるとされます。

  • 努力が結果に繋がると信じられるか
  • 結果が報酬に繋がると信じられるか
  • その報酬が個人にとって価値があるか

つまり、評価制度を通じて「努力→評価→報酬」の因果が明確で納得できるほど、社員のモチベーションは上がるのです。

自己決定理論

自己決定理論では、人間の動機は「内発的動機付け」と「外発的動機付け」に分かれるとされます。

内発的動機付けとは、仕事における基本的欲求である「有能感」「自律性」「関係性」が満たされるほど、高品質なパフォーマンスを発揮するというものです。

したがって、公平な評価制度の設計では、社員の自主性や成長実感を促すフィードバックを重視し、報酬も単なる金銭的インセンティブだけでなく、承認や成長機会など多面的に用意することが望ましいとされます。

マネジメント視点

組織のパフォーマンスを最大化するには、社員のエンゲージメントを高めることが重要です。

ギャラップ社の調査では、「社員のエンゲージメントの変動要因は、少なくとも70%が直属の上司に起因する」と推計されています。

新野くん

上司ガチャの重要性は日々働いていてよく理解できるけど、70%ってすごい数字だね。

くろひつじ

そうだね。ここまで大きな影響力を持つのは、「心理的安全性が確保できるか」が関わっているからなんだ。

心理的安全性とは?

心理的安全性とは、組織内で「報復や嘲笑を受けない安心感」のことを指します。

Google社が行った「プロジェクト・アリストテレス」という研究でも、成果の高いチームの最大の特徴は、心理的安全性の高さであると報告されました。

優秀な人材を揃えること以上に、「社員が安心して発言・相談でき、失敗を許容し合える雰囲気」が高業績な組織を生み出す鍵なのです。

参考文献:Managers Account for 70% of Variance in Employee Engagement|GALLUP

命令統一の原則

組織論には「命令統一の原則」という考え方があります。これは「一人の部下につき直属の上司は一人にせよ」という原則で、複数の上司から指示を受ける事態を避けるものです。

組織の役割分担と優先順位の明確化

複数の指揮命令系統があると、「誰の指示に従えば良いのか」「優先順位はどれか」と部下が混乱し、場合によっては都合の良い指示だけを選んで責任を回避する問題も生じかねません。

そこで階層構造で指揮系統を一本化することにより、命令や情報伝達ルートが明確になり、組織運営の混乱を防げるのです。また、権限と責任の所在が明確になるため、各自の役割に専念でき責任逃れも起きにくくなります。

階層構造はしばしば「官僚的で硬直的」と批判されますが、適切に設計されたピラミッド型組織は、組織を効率よく動かす最も自然な構造だとも言われます。

最後に

今回は、「頑張ったら報われる会社の評価基準とは」をテーマとし、組織マネジメントについてご紹介しました。

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参考文献

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