見積もり金額の決め方や粗利益の乗せ方には、業界を問わず共通する考え方があります。
本記事では、「見積もり金額の決め方」をテーマとし、粗利率の計算式や適正価格の判断基準を解説します。

- 商品の粗利目安は、汎用品は5~10%・製作品は10~15%
- 諸経費の粗利目安は、管理費は全項目の5~15%・その他は実費金額
- 工事の適正価格は、チャージ金額を決め請負事業・派遣事業の相場を確認する
見積もり項目の種類
見積もりの項目は、「汎用品」「製作品」「人件費」「諸経費」の4種類に分類でき、項目ごとに適正価格と粗利設定の考え方が異なります。

仕切り価格に粗利益を乗せる計算式
| 粗利率 | 計算式 |
| 5% | 仕切り価格÷0.95 |
| 10% | 仕切り価格÷0.9 |
| 15% | 仕切り価格÷0.85 |
| 20% | 仕切り価格÷0.8 |
| 25% | 仕切り価格÷0.75 |
| 30% | 仕切り価格÷0.7 |

仕切り価格とは、メーカーが商社・卸売業者へ販売する価格です。「卸売価格」や「仕入れ原価」「仕入れ金額」とも呼ばれます。
汎用品の適正価格
汎用品は、純正品・規格品・標準品・既製品とも呼ばれます。
複数のユーザーが同じものを購入できるため、ネット検索で定価が調べられたり、複数の商社・卸売業者で相見積もりすることが可能です。
- 汎用品:多くの機種・メーカーで使える共通製品
- 純正品:メーカーが自社ブランド用に製造した製品
- 規格品/標準品:JISなど一定の規格に基づいて作られた製品
- 既製品:ユーザー特注ではない、既に作られて販売される製品
自社が製作メーカーの場合、多くは自社で決められた定価が存在します。もし価格の規定がない場合、適正価格の決め方をもとに定価・仕切り価格を決定します。
自社が商社・卸売業者の場合、自社の最低粗利率(多くは5%~10%)または製作メーカーが決めた定価に設定します。

粗利率とは、売上高に対する粗利益の割合を示す値です。
- 粗利益の計算式:粗利益=定価(売価)-仕切価格
- 粗利率の計算式:粗利率(%)=粗利益÷定価(売価)×100
製作品の適正価格
製作品は、特殊品・専用品・特注品とも呼ばれます。
製作品は、顧客の要求仕様に応じた製品を製作するため、汎用品と異なり相場が分かりづらいです。
自社が製作メーカーの場合、製品の材料費・設計費・加工費・組立費・検査費などを割り出し製品価格を決めます。
自社が商社・仲介業者の場合、業界相場・価格の説明がつく範囲内で、汎用品より少し高めの粗利率(10~15%)ほどに設定します。
人件費の適正価格

人件費は、日当・人工費・作業費とも呼ばれます。
時間または1日あたりの人件費(人件費チャージ)を設定し、見積もりに記載します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 作業費 | 120,000円 |
| 作業人数 | 2人 |
| 作業日数 | 1日間 |
| 人件費チャージ(1人/日) | 120,000円 ÷ 2人 = 60,000円 |
| 人件費チャージ(1人/時間) | 60,000円 ÷ 8時間 = 7,500円 |
人件費に該当する項目
人件費は、社外へ出向く現地作業費だけでなく、設計・組立・検査などの社内作業費も該当します。
| 項目 | 種類 |
| 設計費 | メカ設計・電気設計・ソフト設計 |
| 開発費 | メカ開発・電気開発・ソフト開発 |
| 作業費 | 現地作業費・社内作業費 |
| 調査費 | 現地調査費・社内調査費 |
| 調整費 | 現地調整費・社内調整費 |
| 制作費 | 現地制作費・社内制作費 |
| 組立費 | 現地組立費・社内組立費 |
| 検査費 | 現地検査費・社内検査費 |
| 配線費 | 一次配線・二次配線 |
見積もりのチャージ単価を過去実績と合わせなければ、顧客(購買部門)から指摘される恐れがあるため注意しましょう。
人件費(工事)の平均金額
業界別の人件費は、労働者派遣事業と請負事業で相場が異なります。
労働者派遣事業は「人材の提供」を目的とし指揮系統は派遣先企業が持ちますが、請負事業は「成果物の納品」を目的とし指揮系統は請負業者が持ちます。
請負事業の場合
令和8年度の国土交通省の「公共工事設計労務単価」によれば、請負事業の全国全職種加重平均は25,834円/人(日)です。

※ この単価に事業主負担の必要経費分は含まれません。

公共工事設計労務単価とは、国土交通省などが公共工事の予算を計算する際、職人(51職種)1日8時間あたりの人件費として用いる基準単価です。
派遣事業の場合
厚生労働省の「派遣料金」によれば、派遣労働者の平均金額(消費税込み)は、全業務平均で25,337円/人(日)になります。
- 事務/BPO
- 一般事務:17,578円/日
- 会計事務:18,724円/日
- 事務用機器操作員:19,721円/日
- IT/技術
- 情報処理・通信技術者:33,387円/日
- 建築・土木・測量技術者:33,129円/日
- 営業/販売
- 営業 23,734円/日
- 商品販売 16,036円/日
- 営業・販売事務 18,813円/日
- 医療/福祉
- 看護師 23,764円/日
- 薬剤師 38,182円/日
- 介護サービス 15,884円/日
- 社会福祉専門職 16,782円/日
- 清掃/施設/物流
- 清掃従事者 14,549円/日
- 運搬従事者 15,984円/日
- 自動車運転従事者 17,895円/日
- 居住施設・ビル管理人 18,048円/日
チャージ金額が高い場合
会社により、人件費チャージに諸経費(宿泊費や交通費など)を含んでいるケースもあります。
見積もりのチャージ金額が業界平均より高い場合には、その理由をメーカーへ問い合わせましょう。
諸経費の適正価格

諸経費には、商品や人件費に該当しない費用が含まれます。
諸経費はある程度の相場が連想できるため、自社がメーカー・商社・卸売業者のどれであっても、実際にかかる金額を記載しましょう。
諸経費の種類
| 項目 | 詳細 |
| 交通費 | 出向先への交通費 |
| 移動拘束費 | 移動中の拘束時間 |
| 宿泊費 | 人数と日数を記載 |
| リース費 | 必要資材のリース費用 |
| 図面・取説費 | 書類作成に必要な用紙・インク代 |
| 管理費 | 全体金額の5~15%前後で設定 |
管理費とは
管理費とは、会社や現場を運営・維持するために必要な共同経費です。
具体的には、現場監督の給与・事務所の家賃・水道光熱費・通信費・広告宣伝費などが該当します。
管理費に関しても相場がある程度決まっており、諸経費を引いた全体金額の5~15%に設定します。
適正価格の決め方
自社がメーカーの場合、製品の適正価格は、競合の有無・市場の需要・自社の戦略で決めます。
電磁弁の一例
例えば「電磁弁」の場合を見てみましょう。
Metoreeによれば、国内のソレノイドバルブ(電磁弁) メーカーは128社です。
電磁弁の付加価値は、「省電力・発熱性・耐久性・応答性・保護等級・マニホールド対応・省スペース」などがあります。
参考文献:ソレノイドバルブ(電磁弁) メーカー|Metoree
競合の有無
競合が自社の付加価値と競合し、かつ顧客も同じ企業の場合、販売価格を合わせる必要があります。
逆に未参入の顧客がいる場合や、自社の付加価値に独自性があれば、適正価格は自社で決められます。
市場の需要
また、付加価値が顧客の重点目標に合致するものであれば、適正価格の自由度が増します。
例えば「省電力・発熱性・耐久性」は、「カーボンニュートラル・設備停止0」などの目標に合致します。
自社の戦略
市場の需要が増すと適正価格が変わる理由は、市場の需要は顧客が求める付加価値の種類も広げるためです。
例えば自社が中小企業の場合、付加価値や価格の差別化には限界があるため、市場の需要がある分野に参入し「営業力・納期・融通」で勝負することがあります。
押さえておきたいポイント
見積もりを作成するうえで押さえておきたいポイントがあります。
実績価格を調べる
見積もりの適正価格を考える前に、必ず確認したいのが実績価格を調べることです。
実績がある製品は基本的にその価格に則り、価格が変わる場合は「値上がりした理由」を顧客へ説明します。
実績金額が変わる主な理由
- 材料費が上昇した。
- 仕入れ価格が変更した。
- 廃業や倒産により仕入先が変わった。
- 完全なリピートではない。(仕様追加)
- 納期を短縮するため一部の作業を外注する。
また見積もりの価格は極端に高い粗利設定をしないこと。及び型式をあえて記載しないなどの不誠実な対応はしないことも重要です。
顧客からの信頼は、一時的な利益よりも勝ります。
支給品
必要な購入品が自社で購入できない(取引口座がない)場合、顧客から支給してもらうことが可能です。
見積もりを提出する前に、顧客へ相談しましょう。
設定納期
自社が商社・卸売業者の場合や、見積もりする製品が他社からの購入品の場合、納期は仕入先提示納期より1週間ほどの猶予を設けましょう。
一度自社で検品してから顧客へ届けるためです。
納入先・備考欄
納入先は、顧客に希望納入先を確認して記載します。(貴社 ご指定場所でも可)
備考には、「この条件を前提とした金額・納期である」ことを記載します。また納期・型式が変更になる可能性があるなど、「営業の懸念点」もあれば備考欄に記載しましょう。
相見積と一社選定
見積もり提出から手配するまでの流れには、競合のいる相見積もりと、競合のいない一社選定の2種類があります。
相見積もりは複数の会社で同じ仕様の見積もりを提出し、その価格差で依頼先を決めます。相見積もりをする会社の数は、金額や顧客の規定次第で3社以上に及ぶこともあります。
一方で、一社選定の場合は競合先が存在しません。競合がいない一社選定は、以下いずれかの条件に該当する必要があります。
- リピート品で、かつ他社では製作不可の場合。
- 既存の製作品・設備の修理・改造で、かつ他社では実施不可の場合。
相見積もりに勝つ方法は以下のブログで解説しておりますので、是非合わせてお読みください。

最後に
今回は、「見積もり金額の決め方」をテーマとし、粗利率の計算式や適正価格の判断基準を解説しました。






