商社の仕事を徹底解説|総合商社・専門商社の違いや業務内容とは?

こんな人に読んでほしい

商社はB2B取引を主としており、普段私たちが生活する中で、その仕事内容に触れる機会は多くありません。

本記事では、実際に商社で働いている立場から、商社の仕事内容について具体的に解説します。

目次

商社が儲かる仕組み

商社の営業職は、その他業界の営業職と比較し給与水準が高い傾向にあります。

商社は生産者ではない一方で安定した商流も持ち、資源権益や右左品のトレードなどで利益を得る仕組みを持っています。

自社工場における商品在庫費や設備維持費などの固定費がなく、変動費が主なコストになるため、利益を人件費に振り分けやすいのです。

一時的な不景気による利益の減少があった際、固定費は会社経営に大きな打撃をもたらすため、固定費の大きい会社は「労働法上一度上げたら下げにくい」基本給が上がりにくい特徴があります。

右左品とは?

商社用語の右左品とは、顧客から発注された後にメーカーへ発注する商材を指します。対義語は在庫品であり、自社で在庫を持たず右から左へ流すことから「流れモノ」または「右左品」と呼ばれます。

商流

私たちが普段利用する食品・化粧品・自動車などは、それぞれの生産過程において流通網が存在します。

この流通網は日々変化するものではなく、特定の会社から仕入れることで、安定した品質・価格・納期を実現しています。この「特定の会社から仕入れるルート」を、私たちは商いの流れ、略して『商流』と呼びます。

トレードの商流

商社は取り扱うメーカーに制限がないため、顧客の要望次第でプロジェクトそのものを担い、メーカーを指揮する立場に立つことがあります。

導入した設備に対する消耗品以外の部品図は、メーカーの機密情報・知的財産が含まれるため、競合他社への流出を防ぐ目的で顧客に開示されません。

よって、顧客側が依頼先を変えるには設備そのものを一新する必要があり、通常は倒産や部品供給ストップなどの『やむを得ない理由』がない限り商流が生き続けるのです。

これがトレード事業でも、一度商流を獲得すれば商流が確立される理由です。

商社の平均年収

五大商社の平均年収は1,857万円

上場専門商社8社の平均年収は約973万円

Bloombergによると、2025年3月期の五大商社の平均年収は以下となります。

  • 三菱商事 2,033万円
  • 三井物産 1,996万円
  • 伊藤忠商事 1,805万円
  • 住友商事 1,744万円
  • 丸紅 1,708万円

参考文献:三菱商、年収平均2033万円で5大商社トップ|Bloomberg

また2025年3月期、有価証券報告書やIR BANKなどに記載の上場専門商社8社の平均年収は以下となります。

会社選びの重要性

年収を最重視する場合は「どの業界にするか」よりも『どこの会社にするか』の方が重要です。

ココでポイント!

大手転職サイトdodaによれば、総合商社・専門商社それぞれの平均年収はほぼ同一水準になります。

平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)|doda

dodaは登録者ベースで平均年収が算出されており、若い年齢層やベンチャー・中小企業を含むため、一般的なイメージより平均水準が低くなる傾向にあるのです。

商社の事業内容

商社の事業内容は、大きく区分すると「トレーディング部門」と「事業投資部門」に分かれます。

商社が商流を仲介し、仲介手数料を得ることをトレード事業、土地や加工工場・スーパーなどの流通網(サプライチェーン)を買収することで、流通工程そのものを担うことを投資事業と呼びます。

トレード事業は円安や資源の高騰で好業績を生み、投資事業は円高で好業績を生む特徴があるため、昨今の円安や資源の高騰による影響で、特に総合商社の株価は上がり続けています。

ココがポイント!

価格が高騰すると粗利益が高くなる理由は、商社の「トレード」は粗利率で販売価格を決めるためです。仕入先から1,000円の商品を購入し、1,250円で得意先へ販売した場合、粗利益は250円になります。これが例えば2,000円の商品を購入し、2,500円で販売すると、粗利益は500円になります。どちらも粗利率20%で計算していますが、価格が上がる度に粗利益も同じだけ上がるのです。

トレーディング部門

トレード事業の業務内容は、販売する商材によって大きく異なります。

例えば既存商流の右左品を販売する場合、「見積もり作成」や「注文書発行」などの事務仕事がメインとなります。新入社員として入社した当初は、まずココから基本的なB2B商売の流れを覚えていきます。

STEP
見積もり依頼
STEP
見積もり作成・顧客へ提出
STEP
注文書受領・仕入先へ発行
STEP
納品・検収
STEP
請求書発行

工具などの商材を取り扱う小規模専門商社の場合は、薄利多売でひたすらこの業務をこなすことになります。

納品は顧客の稼働日に行うため、国内担当であれば基本的に休日出勤はありません。但し薄利多売の商材は、業務過多(マンパワー不足)による残業が多い傾向にあります。

検収基準の商材

上述した右左品の検収条件は、商材を出荷した時点で条件を満たす「出荷基準」です。対して、特殊仕様の商材や産業設備・無形物を導入する場合、顧客の定めた条件で満たす『検収基準』が一般的となります。

検収条件とは?

顧客が仕入先へ支払いOKとする条件(基準)を指します。検収条件は通常、顧客から見積もり依頼時に提出される「要求仕様書」に記載されます。

STEP
顧客から要求仕様書受領

必要に応じて顧客・仕入先と仕様書の読み合わせをします。

STEP
見積もり作成・提出

必要に応じて顧客と見積もり仕様の打ち合わせをします。

STEP
注文書受領・発行

必要に応じて顧客・仕入先と全体スケジュールの打ち合わせをします。

STEP
仕入先から承認図受領

特殊仕様の商材を導入する場合、仕入先から『こういう商材を作ります』という承認図(仕様書)が届きます。
顧客へ提出し承認を貰う必要があるため、「承認図」または「確認図」と呼ばれます。
承認後、指摘項目に関しては打ち合わせで方向性を擦り合わせします。

STEP
導入

特殊仕様の商材や産業設備は、複数メーカーが絡むことが一般的です。
それぞれの仕入先と連携し、『誰がいつどこで何をするのか』管理し顧客と共有します。

STEP
検収

要求仕様が満たせているか、必要に応じて顧客と打ち合わせします。

STEP
請求書発行

検収基準商材の導入は、顧客の非稼働日(休日)に行うことがあります。よって休日出勤が多く、かつイレギュラー発生時は対応できるメーカーが限られる(特殊仕様の)ため、よりスピード感が求められます。

事業投資部門

商社の投資事業は、短期的な売却益を狙うファンド投資とは異なり、『投資先の成長と自社事業との相乗効果』を重視します。

投資部門に入社したら、まず「既に実行された過去の事業投資先」の業績管理から行います。現地駐在員から報告される月次業績を分析し、財務三表月次予算の基礎を身に付けます。

財務三表とは?

財務三表とは、会社の経営状況を示す「損益計算書(P/L)」「貸借対照表(B/S)」「キャッシュ・フロー計算書(C/F)」の3つの書類を指します。

STEP
案件発掘

市場動向を調査し、有望な企業やプロジェクトを発掘します。例えば、人口増加が見込まれる新興国で食品需要の高まりに着目し、現地パートナー企業との合弁で工場を建設するプロジェクトを構想するケースなどがあります。

STEP
収益分析

投資案件の事業計画について数値分析を行い、財務モデルを作成します。

具体的には、投資実行前に対象企業の資産価値や事業採算性、提携パートナーの技術力・財務体力、法規制や環境・地域住民リスクといったチェック項目を洗い出します。

STEP
契約交渉

投資の詳細(出資比率や合弁契約条件など)を想定し、実際に投資先企業や共同出資パートナーとの交渉を行います。投資条件について合意形成を図るほか、必要に応じて銀行との資金調達交渉も行います。

STEP
PMI支援

M&A案件の場合、買収成立後には組織体制の再編・人員の最適配置・企業文化の統合など、買収先の会社が円滑にグループとして機能するようサポートします。

総合商社と専門商社の違い

専門商社は「繊維」「食品」「医薬品・化学品」「機械・電子」「鉄鋼・金属」などの、特定のカテゴリーに限り事業を展開する商社を指します。

対して総合商社は、これら特定の分野に絞られず幅広い事業へ展開します。しかし、社内での部署はカテゴリーごとに分離しているため、実際の業務内容としては類似しています。

総合商社・専門商社の違いより、その会社の事業規模の違いの方が業務内容が異なり、より事業規模が大きい会社ほど、海外展開や事業投資が多くなり仕事のスケールが増します。

商社の付加価値

市場の付加価値は付与する粗利率に比例します。商社は売上規模が巨大である反面、生産者ではない特性上、平均粗利率は一桁台から10%前後と低めです。

昨今は商社のトレード事業のような仲介業(重層下請け構造)が非難されることもありますが、商社にもB2B特有の付加価値が存在します。

与信取引

商社は、取引先に対して銀行のような『代金回収や商材に対する信用・保証』を提供します。

企業間取引における「検収条件」や「支払い条件」は、その取引ごとに双方で取り決めし、仕様書や注文書に記載する義務があります。

しかし、それらの条件が同意を得られず、例え必要な商材でも取引に至らないケースも珍しくありません。

例えば建設業界は、重層下請け構造により、メーカーも外注先への支払い義務が生じます。この外注への支払いが顧客からの支払いより早い場合、メーカー(上図でいう下請)は黒字倒産するリスクが上がるのです。

この状況を回避できるのが商社であり、顧客・メーカーとの支払い条件の調整(立替払い)や、商品の不具合による支払い延長の了承(品質保証)、また場合により追加費用の支払いも行います。

与信管理

企業間取引では取引口座開設前に、必ず相手企業の「与信管理」を行います。

与信管理とは、取引先の倒産リスクを最小限に抑えるため、取引開始前に会社情報(法人名、法人番号/登記情報、設立年月、事業内容、資本金、従業員数など)を調査することを指します。

商社は取引自体を仲介するため、この与信管理を代行してくれる役割を持ちます。特に「資金繰り」や「情報」に強い商社は、この特性が好まれるのです。

取引先が倒産するリスクとは?

例えば金額の大きい設備を制作途中に、

  • 顧客が倒産した場合…それまで制作した代金を回収できないリスクが生じます。
  • メーカーが倒産した場合…代替え品の選定、指定納期調整などのタスクが生じます。

営業代行

商社は、ユーザーに合わせた(顧客志向の)営業をする、いわゆる『営業代行』の付加価値を持ちます。

在庫管理

商社のトレード事業では、回転率の高い商材を自社在庫で保管し、発注~納品のリードタイムを削減することがあります。

在庫管理だけでなく、配達や代金回収、納品後のフォローまで行なってくれるため、取引先が全国に点在する場合や、少量多頻度の配送ニーズがある場合、商社経由の方が効率的です。

通関・貿易実務の代行

商社は、輸出入時の輸送手配や通関手続き、またSV(スーパーバイザー)の航空券手配・保険手続きまで代行してくれます。

国により通関・貿易実務や法務対応の複雑さが異なりますが、特に発展途上国へ出荷する際は商社経由の方が好まれます。

実際にOECDによる推計では、国境手続きの効率化だけで、貿易コストが12~18%減を見込めるとのデータがあり、これは商社の平均粗利率より高くなります。

参考文献:貿易の円滑化と世界経済|OECD

SV(スーパーバイザー)とは?

SV(スーパーバイザー)とは、現場の監督者・管理者を指します。国内製品を国外へ出荷する際、現地での据付・調整作業を要する場合には、製品の他に現地人を指揮する「監督者」も派遣することがあります。

情報共有

商社は、国内外問わず様々な販売ネットワークを持ち、それを取引先に共有することができます。

メーカーが国内外の新規開拓や市場調査をする際、そのマーケティング(営業)コストが膨大にかかりますが、それを国内の商社数社に絞ることで、コストを大幅に圧縮できるのです。

商社に向いている人

商社で結果を出す人や、逆に精神を病んで辞めてしまう人には明確な違いが存在します。

人の気持ちがわかる

商社は複数案件を並行して進めるため、顧客の緊急度に合わせた優先順位付けや、角が立たない伝え方ができる人が向いています。日常的に想定外のトラブルや、急なリスケに対応する場面が多々あるのです。

そうした変化を前向きに捉え、臨機応変に動ける人を、私たちは「人の気持ちがわかる人」と表現しています。

この要素は入社当初から完璧にこなせるわけではなく、様々な人やプロジェクトに揉まれる中で、徐々に身につけていくものですが、根本的に向いていない人も一定数存在します。

本質を定められる

商社はメーカーの営業職ほど商材に関する専門性がないため、状況次第で顧客・メーカーそれぞれへ協力を仰ぐことも多々あります。

しかし、顧客とメーカーの関係性や担当営業次第によって、各社の連携が取りづらく、板挟みになるケースが少なくありません。

そうした状況で各社に真摯に向き合い続けることは、正解でありながら間違いでもあります。

優先すべきは「顧客のゴール」と「プロジェクトの進行」であり、障害となる要因を見極められる人が、より大きなプロジェクトを任されます。

商売を楽しめる

商社は国内外問わず、世界的なスケールで商売に最前線で関わります。

どういう表現・表情・関係性であれば商売が上手く進むのか、それを肌感で日々感じることができ、現代の商売人を身をもって体感できるのです。

そのような環境を楽しみ、商売人としての洞察力を育める人は、将来的に大きなプロジェクトを成功に導きます。

多様な価値観を楽しめる

商社は出張頻度が高く、異なる文化や考え方に触れる機会が非常に多いです。

固定観念にとらわれず、異文化や様々なバックグラウンドを持つ相手とも協働できる人は、日々変化する環境でもストレスなく楽しむことができます。

くろひつじ

商社は留学・海外移住経験がある人を採用しやすいんだけど、これは日本以外の価値観に抵抗がない性格が好まれるんだ。

最後に

今回は、実際に商社で働いている立場から、商社の仕事内容について具体的に解説しました。

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