商売を始めるには『ヒト・モノ・カネ』いずれかの資産が必要ですが、この中で私たち一般市民が持ち得るのは「ヒト」です。人が集まりビジョンを共有すれば仲間になり、付加価値を共有すれば取引先になります。
本記事では、「すべての商売は、人に好かれる競技である」をテーマとし、マーケティング戦略の基礎を解説します。
商売は人に好かれる競技である
どのような商売であっても、「人を集めて」「人に選んでもらう」競技をしています。
これは普遍的な原則であり、国や時代に限らず共通している『商売の鉄則』です。
新野くん人に好かれることってそんなに重要なの?



そうだよ。商売において「人を集める」のも「人に選んでもらう」のも、『人に好かれる』ことで実現できるんだ。
営業の役割
そして、この競技を生業としているのが私たち営業職です。
営業は訪問や展示会、Webなどで人を集め、見込み顧客に選んでもらえるよう信頼関係を構築しています。
パイプラインの重要性
人を集めるとは、「人に自社の商売を認知してもらい、見込み顧客(リード)を獲得する」マーケティング戦略のことを指します。
この見込み顧客が多いほど売上のブレが小さくなり、会社は長期的な業績が安定します。商談候補の蓄えである「営業のパイプライン」が将来の売上を下支えし、特定の顧客への依存率を減らす効果があるためです。
顧客依存のリスク
限られた大口案件に頼るビジネスは、一件失注や一顧客喪失の影響が極めて大きく、収益が急落するリスクを伴います。(これを顧客集中度の高いビジネスと言います)
マーケティング戦略の重要性は、起業当初の集客はもちろんのこと、業績が安定している大企業であっても同様の効力を持つのです。
参考文献:顧客集中度のリスク|SPP
顧客化する比率
見込み顧客の案件は、失注の可能性を見込んで、目標額の3倍が理想とされています。
見込み顧客から商談・受注に至るまでには、大きな目減りが生じ、ごく一部のみしか最終的に顧客化しないためです。そして、その顧客化される比率は業界ごとに異なります。


- リード:見込み顧客
- MQL:関心を示している見込み顧客
- SQL:受注する可能性が高い案件
- Closed:成約案件
| 業界 | リード→MQL | MQL→SQL | SQL→Closed |
| 航空宇宙 | 18% | 32% | 61% |
| 自動車 | 21% | 42% | 49% |
| B2B SaaS | 39% | 38% | 37% |
| バイオ | 36% | 40% | 55% |
| 建設業 | 17% | 37% | 54% |
| Eコマース | 23% | 58% | 60% |
| 金融サービス | 29% | 38% | 53% |
| ヘルスケア | 24% | 38% | 51% |
| 産業用IoT | 22% | 39% | 51% |
| 製造業 | 26% | 41% | 51% |
| 医薬品 | 41% | 56% | 64% |
| 不動産 | 27% | 33% | 53% |
| IT・ソフトウェア | 28% | 39% | 59% |
参考文献:2026年コンバージョン率指標|FirstPageSage
リードを獲得する方法



見込み顧客の数が重要なのはわかったけど、どうやって集客すれば良いの?



集客ツールは業界に関わらず、ある程度共通しているんだ。その手法と、それぞれのメリット・デメリットを見てみよう。
コンテンツマーケティング
(投資するもの:時間)
YouTubeやSNS、ブログなどで有益な情報やコンテンツを発信し、見込み顧客を獲得する手法です。
コンテンツ作成に投資する金額は数万円程度ですが、長期間コンテンツを作り続ける必要があるため膨大な時間を投下します。
メリット
- 有益な情報を通じ信頼関係を構築できる。
- コンテンツを蓄積すれば安定した流入が期待でき、広告より費用対効果が高い。
2023年にHubSpotが発表した調査では、B2B企業の71%が「コンテンツマーケティングで見込み顧客を獲得している」と回答しており、そのうちの多くが「広告よりも費用対効果が高い」と評価しています。
デメリット
- 成果が出るまでに時間がかかる。(長い場合は2年以上)
- 「誰に何を届けるか」の設計が不十分だと効果が出にくい。



ブログではよく「誰に」「何を届けるか」が重要だと言われるけど、これはコンテンツマーケティング全体で共通しているってことだね。
また検索結果上位には、検索アルゴリズム変動など外部要因の影響も受けるため、成果を出すには長期的なサイト改善やSEO知識が求められます。
ウェブ広告
(投資するもの:お金)
GoogleやYahoo!などの検索結果に表示されるリスティング広告、及びバナー広告等のディスプレイ広告によって、見込み顧客を獲得する手法です。
メリット
- コンバージョン率が高い。
- 出稿後すぐに効果測定と改善ができ、短期的に一定の見込み顧客数を確保しやすい。
検索連動型広告であれば、顕在ニーズを持つユーザーをピンポイントで獲得できるため、コンバージョン率が比較的高い傾向にあります。
実際に、B2Bマーケティング担当者に「もっとも受注につながっているチャネル」は何か尋ねた調査では、第1位が「Web広告」だったというデータもあります。


BtoBマーケティングにおいて最重要視しているKPIとは|IDEATECH
デメリット
- キーワードにより投資費用が高い。
- 一度出稿を止めると見込み顧客獲得が途絶えてしまう「一過性」の側面がある。
人気キーワードや専門領域では、1件あたりのクリック単価が数万円の高コストになることがあります。よって、特に中小企業にとっては潤沢な広告予算を確保しづらく、「費用対効果が合わない」との声もあります。
投資金額の相場は以下のブログで解説しておりますので、ぜひ合わせてお読みください。


展示会・イベント
(投資するもの:お金)
業界向け展示会やセミナーイベントに出展・参加し、来場者と名刺交換や対面コミュニケーションを行うことで見込み顧客を獲得する手法です。
メリット
- 短期間で直接製品の訴求ができる。
- 見込み顧客の信頼度が高い。
対面営業の得意な企業にとって、展示会は短期間で直接製品の訴求ができる貴重な機会です。
対面展示会では、一度の出展で100~300件の名刺を獲得でき、そのうち5~10%が1ヶ月以内に商談に繋がったデータもあります。


また、展示会の来場者はその業界の人が主になるため、信頼度の高い見込み顧客を得やすい点も大きなメリットです。
デメリット
- 出展コストが非常に高額。
展示会への出展は、人件費・ブース費・出展品費などを含めると、数百万円以上のコストがかかり、かつ準備にも工数がかかることが最大の課題です。
また、自社のフォローアップ体制を整えなければ、「見込み顧客で終わる」可能性もあります。
セミナー・ウェビナー
(投資するもの:お金)
自社主催または共催でセミナーやオンラインウェビナーを開催し、参加登録者の情報を取得する手法です。
メリット
- 汎用性が高い。
- 対面で、かつ開催費用が安い。
セミナーは会場費用を抑えやすく、またWebで開催する場合は地理的制約なく、全国の潜在顧客を集客できる利点があります。
他社と共催して集客力を高めたり、実施後に動画アーカイブを公開して長期的な見込み顧客獲得に繋げたりと、汎用性も高い特徴もあります。
デメリット
- これ自体が集客ツールにはならない。
- プレゼンテーションスキルが必要になる。
集客自体は他のツールとの連携が不可欠で、「メール案内やSNS告知などで、他の施策と組み合わせないと十分な参加者を集めにくい」点が課題です。
また当日のセミナー内容も質が問われ、講演テーマの設定や講師の話術によって成果が左右されます。



コンテンツマーケティングとの相性は良いから、「コンテンツ」で集客した後に「セミナー・ウェビナー」で顧客化することもあるね。
アウトバウンド(電話・訪問・メール)
(投資するもの:時間)
アウトバウンドとは、電話・訪問・メールを用いて、営業から主導的にアプローチする手法です。
メリット
- アプローチ先に上限がない。
- 訴求ターゲットを絞ることができる。
こちらから主導的にアプローチできるため、労力が続く限りアプローチ先に上限がありません。
また適切に絞り込んだターゲットに対しては極めて効果的で、個々にヒアリングすることで潜在ニーズを引き出すことができます。
デメリット
- 信頼の獲得にはならない。
- 人的リソースへの依存度が高い。
この手法は人的リソースへの依存度が高く、営業のスキルやトークスクリプト次第で成果が大きく変動します。
また効率重視で大量架電すると、顧客側の負担・反感も招きやすく、断られた見込み顧客への再アプローチには慎重さが必要です。



どの手法も一長一短だね。



そうだね。集客ツールには正解がないからこそ、色んな手法を試してみるしかないんだ。
成約を獲得する方法
成約を獲得するとは、見込み顧客に自社の商品やサービスを「選んでもらう」ことを指します。
基本的にどのような商品やサービスも既に市場に出回っており、違うのは「付加価値」や「信頼関係」です。この付加価値をどれだけ高めるかで、商売の優位性が変わってきます。



例えば、「世界で最も売れているハンバーガー屋さんは、世界で最も美味しいハンバーガー屋さんか?」を考えてみよう。
付加価値の種類


Photo:Justin Sullivan/gettyimages
世界で最も売れているマクドナルドは、その立地的な「利便性」やハッピーセットを購入した時の「限定特典」、世界的に安定した「品質と安全」にベネフィットをおいています。
つまり成熟している業界では、「商品が美味しいのは当たり前のこと」であり、他の付加価値でどう差別化をするかがカギとなります。
付加価値の種類は多岐に渡りますが、例えば組織ではなく個人が差別化するために、最も効果的な方法をみてみましょう。
信頼関係の構築
Forrester社の2024年調査では、取引先との信頼関係が築けている場合、そうでない場合に比べて取引する可能性が約2倍に高まる(85%対48%)としています。
個人ではなく組織として製品を購入するにも関わらず、「商品」より「人」の付加価値を重要視するのは、少し疑問符が残るものではあります。
しかし、『昔の商人は火事が起きた際、「商品」よりも「顧客名簿」を井戸に投げ入れて守った』という話もあり、この原理はいつの時代も共通する普遍的な原則であるとも言えます。
参考文献:信頼という要素:BtoBをBwBに変える|Forrester
顧客本位の姿勢
B2B取引における700件以上の大型購買を分析した調査によると、選定先を決めた理由で最も多かったのが「アイデアの提供」と「協働作業」です。
実際、トップ営業マンは「自分が何を売るべきか」ではなく「顧客が何を達成したいか」を議論の中心に置き、顧客とともに解決策を作り上げることで競合との差別化をしています。
参考文献:営業の成功要因|RAIN Group
最後に
今回は、「すべての商売は、人に好かれる競技である」をテーマとし、マーケティング戦略の基礎を解説しました。










