【商社に入社する方へ】専門商社って激務なの?現役の商社マンがご紹介します。

皆さんは、転職先や就職先の候補として、専門商社を考えたことがありますか。

私は現役で商社の営業マンをしています。専門商社は年収が高いわけではありませんが、転勤や出張の頻度も総合商社ほど多くないため、いわゆる「普通のサラリーマン像」として扱われることが多々あります。

実際に「サザエさん」の波平やマスオさん、「クレヨンしんちゃん」の野原ひろしなど、昭和の一般家庭として描かれる漫画では、父親は商社で働いています。

今回は専門商社に興味がある人に向けて、その概要から、実際に働いている立場から見える現実についてご紹介します。

こんな人に読んでほしい
  • これから専門商社に入社する人
  • 転職先の候補として専門商社に興味がある人
新野くん

商社って高給な印象だけど、専門商社はそうでもないのかな?将来家庭を持ちたいから、転職先に商社も候補に入れたいんだけど。

くろひつじ

メン!専門商社の中でも会社の規模によって変わるけど、単価の高い商材を取り扱う場合、30代で年収600万は目指せるね。

商社にとって事業の安定性は、持っている商流の規模に依存します。商流とは商いの流れを指し、取引先は目的の商品に商流がある場合、その商品を取り扱う商社からしか購入できません。

特に相応の商流を持つ安定した専門商社は、戦後GHQにより分離した元総合商社(三井商事・三菱商事・住友商事)か、もしくはその関連企業であることが少なくありません。

戦前は企業間取引が民主化されておらず、会社は市場の情報を得るのに苦労したため、当時その専門である商社を利用していました。この時代に商社は数多くの商流を獲得し、現代まで取引実績として引き継いでいます。

この記事のまとめ
  • 専門商社の中でも産業系は、最も年収が高い傾向にある。
  • その理由は「日本の主要産業で」「高額商材が主である」から。
  • 安定した商流を持つ商社は受注工数は少ないが、仕事は決して楽ではない。
目次

専門商社に就職するには

商社は一般的に、学歴よりも海外への留学経験や、移住経験を重視します。最終学歴は大学卒が大半を占めますが、その偏差値はバラバラであり、大学のランクで就職を諦める必要はありません。

その一方で、働いている人のほぼ全員が何かしらの海外経験を持っています。商社は国内だけでなく海外の取引が盛んなため、海外に抵抗がないことが優先順位として上位付けられているのです。

英語よりも営業

中途採用の場合、海外経験よりも重視されるのが、営業の経験です。商社の目的は商流を獲得することであり、いくら海外経験が豊富でも営業ができなければ話になりません

商社では国内担当、海外担当が明確に分かれており、以下のような役割に分類されます。

  • 国内担当:新規の商流獲得がメイン
    • ルート営業の場合でも、海外へ展開するための新たな実績を作り出す。
  • 海外担当:既存商流の展開がメイン
    • 海外市場の方がスケールが大きいため、売上総額は国内より高い。

海外顧客の多くは日本企業の現地法人が主流のため、まず国内で新規の実績を作り出す必要があります。

海外担当も現地のサプライヤーを開拓することもありますが、自社の現地法人が対応することが一般的なため、基本的には国内の実績を展開することがメインになります。

営業に向いている人の特徴については以下のブログでご紹介しておりますので、是非合わせてお読みください。

年功序列

総合商社や専門商社は、年功序列制度を採用している日本風土の会社が一般的です。

営業のスキルは属人的な要素が大きく、個人の性格や努力次第で営業成績が上下します。しかし、基本的に商社は成果を出し続ければ年収がアップする業態ではありません。

その理由は、商社における成果は既存の商流(過去の実績や信頼性)を持ってこそであり、属人的な要素ではないと判断されるためです。これは、入社前に容認しておくべき重要なポイントです。

自分がコントロールできない領域に意見するほど無駄な時間はありません。基本的には自責思考。自分が同調できる環境に身を置き、自身の戦場を定めましょう。

儲けやすい業界

実質賃金が下がり続けている現代の日本では、「普通」のハードルが年々上がり続けています。その中で、学歴に囚われず自分の家庭を築くには、相応の儲けやすい業界に身を置く必要があります。

商社のビジネスモデルは仲介業者のような側面があり、自社で商品やサービスを生産しない以上、単価の高い商品を取り扱っても自社の工数が増えることはありません。

その一方で、単価の高い商品を取り扱えば必然的に粗利益も高くなります。単価の高い商材を取り扱う商社は、他のどの業界よりも儲けやすいと言えるのです。

粗利益とは?

粗利益とは、売上高から原価を差し引いた利益を指します。
商社の平均粗利率は10%~20%です。

  • 100万円の商品を粗利率10%で販売した場合、粗利益は10万円
  • 1000万円の商品を粗利率10%で販売した場合、粗利益は100万円

専門商社って激務なの?

では、実際に儲けやすい業態に身を置いた場合、日々の業務はどのくらい変化するのでしょうか。

商社で働くなら「コト売り」

商社を含めた仲介業者は、大きく分けて「モノ売り」と「コト売り」に分けることができます。それぞれ以下のような特徴があり、コト売りの方が物件単価が高く、儲けやすい業界に分類されます。

モノ売り

有形物(商社用語で言う流れモノ)を中心に販売する会社です。検収は出荷基準のものが多く、商品を会社から出荷した時点で取引先に支払い義務が生じます。

そのため、アフターフォローを逐一する必要がなく、会社の信頼に直結する依頼以外は対応しない会社が一般的です。商社やサプライヤーはこれを「手離れが良い」と表現します。

商品単価が低く物件数で売上のスケールをカバーしているため、平日の業務は多忙な一方で、休日出勤が少ない傾向にあります。

主な特徴

  • 単価が低く件数が多い
  • 休日出勤が少ない

コト売り

無形物(人材・ソフト・サービス)や産業機械、エネルギー設備を中心に販売する会社です。現地工事などにより、仕入先のメーカーを現地に派遣することが多々あります。

検収は検収基準のものが多く、取引先が定めた検収条件を満たさなければ取引先に支払い義務は生じません。その検収条件には、保証期間やアフターフォローも含まれます。

商品単価が高く物件数が少ない一方で、1件当たりに要する時間は5年以上に及ぶこともあります。

主な特徴

  • 単価が高く件数が少ない
  • 休日出勤が多い
くろひつじ

どちらも一長一短だけど、より儲けやすい業態に行くなら「コト売り」の方がお勧めだよ!

「コト売り」の海外担当

「コト売り」の商社は儲けやすい業態に分類されますが、もし自身が海外担当の場合、現地に仕入先のメーカーを派遣するため自分も海外にいる時間が長くなります。

現地にいる期間は諸手当が支給されることもありますが、それでも総合商社のような1千万円を超える年収は見込めません。

よって、給与面を重視する場合でも、家族との時間を重視する場合でも、専門商社の海外担当になるにはそれなりの「働く理由」が必要だと言えます。

実際に専門商社の海外担当は、その出張の多さや待遇面の不満から、総合商社に転職したり国内担当に異動希望を出す人が多い傾向にあります。

「コト売り」の国内担当

一方で、「コト売り」の国内担当の場合、休日出勤はあれど出張頻度はそれほど高くないため、年収600万前後で安定した環境で働くことができます。

しかし、前述した通り国内担当は新規の商流獲得がメインとなるため、それなりの営業経験のある人が配置される傾向にあります。

営業のスキルは先天的な要素が大きいと考える人がいますが、実際には後天的に身に付けることが十分可能な分野です。営業の心得については以下のブログでご紹介していますので、是非合わせてお読みください。

専門商社の種類

専門商社とは、その名の通り「ある特定の分野に特化した」商社です。その分野は多岐に渡りますが、一般的に年収の高い分野は鉄鋼・機械・部品などの産業系商社に多く見られます。

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分野主な取扱内容
鉄鋼・非鉄金属商社鉄鋼材、アルミ、銅、チタンなどの原材料や加工品
機械・設備商社工作機械、プラント設備、産業ロボット、制御機器
化学品商社石油化学製品、樹脂、塗料、接着剤、電子材料
電子・電機部品商社半導体、電子部品、デバイス、基板、電子機器
自動車関連商社自動車部品、車載機器、車両輸出、メンテナンス部品
食品商社食品原料、加工食品、農水産品、輸出入
繊維商社衣料品原料、生地、製品OEM、アパレルブランド支援
医薬・医療機器商社医薬品原料、医療機器、診断機器、介護用品
建材・住宅設備商社建築資材、住宅設備機器
エネルギー・資源商社石油、ガス、電力、再生可能エネルギー関連設備
環境・リサイクル商社廃棄物リサイクル原料、環境対策機器、カーボンクレジット取引

産業系の商社とは、「自動車・産業設備・船舶・航空機」を製造するメーカーを顧客とし、そこで使用する工業製品や、その関連技術を取り扱う商社を指します。いわゆる日本のものづくり産業を支える業界です。

産業系商社の「コト売り」

顧客が稼働している平日に供給する「モノ売り」の商社は、平日の仕事がメインとなります。

一方で、検収基準である無形物や産業機械を中心に販売する場合、その設置工事は顧客の非稼働日に行うため、長期連休や週末がメインとなります。

加えて、その設置工事は長い場合だと1ヶ月以上を要することもあるため、平日、休日ともに業務過多になるケースも少なくありません。

例えば産業機械を顧客の工場へ設置する場合、以下のようなタスクが存在し、それぞれのメーカーや下請企業との連絡・調整・立会を行います。

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作業対応者会社
顧客の要望をヒヤリングする営業商社
設備を設計する設計設備メーカー
購入品を手配する購買設備メーカー
支給品を手配する営業商社
支給品を運搬する運搬業者下請
設備を製作する製造設備メーカー
設備を調整する品質設備メーカー
設備をバラす製造設備メーカー
設備を運搬する運搬業者下請
設備を横引きする重機業者下請
導入箇所の清掃をする清掃業者下請
導入箇所のケガキをするケガキ業者下請
導入箇所へエア配管や電気配管を延長する配管業者下請
導入箇所へエア配線や電気配線を延長する配線業者下請
導入箇所へ通信ケーブルを延長する通信業者下請
設備を復旧する製造設備メーカー
設備を精度調整する品質設備メーカー
くろひつじ

これは設備1台ごとに発生するタスクなんだ。もしラインごと受注したら、これが一気に数十台規模になるね。

専門商社の現実

営業の年収は、自身が抱える物件の売上総利益に比例します。そしてその利益は、自身が抱える責任の大きさにも比例します。

商社は儲けやすい業界に分類されますが、それは決して簡単に稼げるという意味ではなく、あくまで他の業界より受注獲得における工数が少ないだけなのです。

その前提の基、日本のものづくり産業を支えながら安定して働ける環境にあるので、専門商社は十分にお勧めできる仕事であると言えます。

最後に

今回は、専門商社に興味がある人に向けて、その概要から、実際に働いている立場から見える現実についてご紹介しました。

専門商社は様々な分野がありますが、その共通点は全員が営業であることです。

現場の営業をしていると、企業間取引に対して最前列で触れることになります。もし皆さんが商売好きであったり、対人関係にストレスを感じにくい場合には、ぜひ専門商社に就職してみることをお勧めします。

今後も現代のビジネスマン向けに情報を発信していきますので、本ブログをブックマークして頂けますと幸いです。

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