【意思決定の基礎】期待値の計算式と活用方法を現役の商社マンがご紹介します。

皆さんは何かを決定する際、直感と論理どちらで決めていますか。

私は現役で商社の営業マンをしています。商社に限らず、仕事の現場で起こる選択には、常にリスクと責任が付き纏います。

そしてリスクとリターンは表裏一体であり、適正なリスクをとることが、自分や組織の目標達成に繋がります。

今回は、選択に意味を持たすために必要な「期待値の計算式」と、その活用方法についてご紹介します。

こんな人に読んでほしい
  • 選択に責任を伴う立場の人
  • 組織における選択を論理的に行いたい人
新野くん

期待値って仕事の現場ではあまり聞かないね。確かに選択する機会は多いけど、いつも直感的に判断してるなあ。

くろひつじ

メン!直感的に判断することは悪いことじゃないよ。期待値の計算は、その選択をした理由を論理的に説明するモノだからね。

重大な決断をした結果、失敗することは決して悪いことではありません。

一方で、過去に成功体験を積み上げた人ほど、その選択には責任が伴います。また組織における選択も、全員が納得する理由を説明するのは想像より難しいものです。

その判断基準は人により異なるのも当然ですが、時に明らかな正解がある場合でも、選択者の心理状態で結果が変化することもあるのです。

この記事のまとめ
  • 個人的な選択をする場合には、リスク軽減が重要である。
  • 組織的な選択をする場合には、計算材料の信憑性が重要である。
  • 選択した結果は例外なく結果論である。選択したことを信じ進み続ける必要がある。
目次

選択の概要

成功者の多いユダヤ人の書物タルムードには、選択の重要性を示す逸話が数多く残されています。「ふたつの道」もその1つです。

ふたつの道

ある男が旅をしていました。道が二つに分かれる場所に差し掛かり、どちらの道を進むべきか迷っていました。そこに一人の賢者に出会い、男は尋ねました。「どちらの道を行くのが正しいのでしょうか?」

賢者は答えました。「どちらの道も、最初は険しく困難だろう。しかし、一方の道を選び、最後まで歩き抜いた者には、必ずや安寧と喜びが待っている。もう一方の道を選び、途中で諦めてしまった者には、後悔と失望しか残らないだろう。」

男は深く考えました。そして、一方の道を選び、困難に立ち向かいながらも歩き続けました。時には挫けそうになりながらも、賢者の言葉を信じて進みました。長い年月が過ぎ、男はついに目的地にたどり着きました。そこには、彼が想像もしなかったほどの幸福と平和が待っていました。

一方、もう一つの道を選んだ別の男は、最初の困難に直面しただけで諦めてしまいました。彼は別の道を探し、また別の道へと移りましたが、結局どこにもたどり着くことはできず、後悔の念に苛まれながら人生を終えました。

この物語には複数のメッセージが込められています。

まず、この2つは同じ道であった可能性があります。自身の選択を正しいものにするには、選択した道を進み続けなければいけません。

次に、選択した結果はすべて結果論であることです。

例え賢者の助言であっても、選択した時点でそれが正しいか証明することは誰にもできません。だからこそ、組織が同じ選択するためには、トップダウンやボトムアップといったルールが必要なのです。

タルムードとは?

タルムードとは、ユダヤ教の律法と倫理・哲学・物語・伝承を集めた文書集を指します。翻訳版は誤訳の可能性があるため、ヘブライ語で書かれたものが聖典とされています。

タルムードの教えについては以下のブログでご紹介しておりますので、ぜひ合わせてお読みください。

人生は選択の連続

「人生は選択の連続である」という考えは、多くの分野で提唱されています。

  • 心理学:アメリカ心理学会(APA)
    • 人は1日に平均3万5,000回の意思決定をしていると推計。
  • 哲学:実存主義のサルトル氏
    • 人間のあらゆる行為は選択によって成り立つと主張。「選択の放棄すら選択である」
  • 行動経済学:ノーベル賞を受賞したダニエル・カーネマン氏
    • 人間の生活には無意識的な「小さな選択」が連続して起きていると主張。

選択疲れ

アメリカの心理学者ロイ・バウマイスター氏は、人間は1日のうちに何度も選択を繰り返すことで、選択疲れを起こす(自己制御力が低下する)ことを提唱しました。

研究例

ショッピングで選択肢を次々に選んだ被験者は、その後のテストで自己制御力が低下することが実験で確認された。

ビジネス・社会への応用

経営者やリーダーは、重要な意思決定を午前中に済ませることを推奨。
オバマ元大統領が「服の色を毎日同じにする」のは決定疲れを避ける有名な例。

期待値の計算式

例えば大企業・中小企業・個人のそれぞれが、どの新規事業に参入するか選択する場合を考えてみましょう。

くろひつじ

ビジネスの期待値は以下のような方程式になるよ!

期待値=成功確率×利益+失敗確率×損失

待値(年間)=期待値÷継続年数

選択者

  • 大企業
    • 資本金:5億円以上
    • 従業員数:100名以上
  • 中小企業
    • 資本金:3億円以下
    • 従業員数:100名以下
  • 個人
    • 資産:1000万以下

新規事業

A案

成功確率:30%、平均利益:1億円

失敗確率:70%、平均損失:-3,000万円

平均継続年数:3年

B案

成功確率:10%、平均利益:10億円

失敗確率:90%、平均損失:-5億円

平均継続年数:3年

C案

成功確率:30%、平均利益:1,000万円

失敗確率:70%、平均損失:-100万円

平均継続年数:10年

D案

成功確率:10%、平均利益:1億円

失敗確率:90%、平均損失:-1,000万円

平均継続年数:10年

計算結果

A案

期待値:0.3×1億+0.7×(−3,000万)=900万円/3年

年間の期待値:900万÷3= 300万円

B案

期待値:0.1×10億+0.9×(−5億)=−3.5億円/3年

年間の期待値:−3.5億÷3= −1.17億円

C

期待値:0.3×1,000万+0.7×(−100万)=230万円/10年

年間の期待値:230万÷10= 23万円

D案

期待値:0.1×1億+0.9×(−1,000万)=100万円/10年

年間の期待値:100万÷10= 10万円

選択条件

ビジネスにおける期待値の計算には、情報の精度リスク低減が必要になります。

A~D案の精度は正しいものとする。

これは特に組織において重要な選択をする場合に必要な要素です。

情報の精度とは、上記A案~D案のような期待される結果を統計学的に図ることを指します。統計学上、最低400のサンプル数が必要となるため、専門の会社へ依頼しましょう。

リスク低減を考慮する。

これは特に個人において重要な選択をする場合に必要な要素です。

個人の選択で期待値より優先されるのはリスク低減。失敗した時に再度挑戦できるリスクに抑えることです。固定費の概念がない個人であれば、失敗するリスクよりも失敗する前提で捉えるべきです。

選択結果

以上の条件から、それぞれの推奨される選択は以下になります。

スクロールできます
区分推奨案理由
大企業A案B案はハイリターンであっても期待値がマイナスのため、A案。
中小企業A案損失3,000万円に耐えられる場合はA案。耐えられない場合はC案。
個人C案D案はハイリターンであっても期待値が低いため、C案。

最後に

今回は、選択に意味を持たすために必要な「期待値の計算式」と、その活用方法についてご紹介しました。

組織において何かを選択をすることは、反対意見を持つ人からの軋轢を生みます。いくら情報の精度を上げて論理的な説明をしても、それが正しいと証明するのは結果を出した後になるのです。

一方で自由とは、自分が選択権を持つことを意味します。人の選択を否定することや、自分が選択することを面倒がるのは何のメリットもありません。

今後も現代のビジネスマン向けに情報を発信していきますので、本ブログをブックマークして頂けますと幸いです。

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