私は現役で商社の営業マンをしています。
「このペンを1万円で売ってください」というセリフは、映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』が元ネタであり、面接で部下に「このペンを私に売ってみろ」と指示するシーンからきています。
このシーンは、営業スキルを試す定番の質問として、ビジネスの世界で広く知られるようになりました。
今回は、実際に現場で営業をしている経験を踏まえ、ペンを1万円で売る方法をご紹介します。

- 営業スキルを磨きたい人
- 高く売る方法を知りたい人

ペンが1万円って高すぎじゃない?難しいよ。。

メン!そうでもないよ。1万円分の『付加価値』を言葉で創造すれば良いんだ。
ペンを1万円で売るというテーマは、「付加価値をどう創出するか」の視点で非常に実践的なトピックです。
人にモノを売るには、大きく分けて『販売を優先する』か『顧客を優先する』かで方法が変わります。

- 顧客を優先する場合、ペンに『感情・理由』を付与する。
- 販売を優先する場合、ペンに『嘘・保証・特典』を付与する。
- 本テーマは”1万円のペン”と”信頼の獲得”をどう繋げるかが重要である。
ペンを1万円で売る方法【販売優先編】
本議題のように、ただ売ることを求められる場合には、”聞こえの良い言葉”をかけることで購入意欲を刺激することができます。
1.ストーリーをつける
このペンは、○○さん(著名人)が使っていた万年筆と同じものです。取引先の古物商から譲り受けました。
最も定番な方法は、モノにストーリーを付け加えることです。
このストーリーは”バレない嘘”にする必要があるため、ここで言う著名人は顧客との接点が無く、かつメディア露出の少ない人物を選ぶ必要があります。

要は、調べればバレるような嘘ではダメってことだね。
2.希少価値をつける
このペンは、世界で10本限定の○○記念モデルです。希少価値が高く、市場に出回ることはありません。
2つ目の方法は、モノに希少性を付け加えることです。
1.のストーリーと類似しますが、ペンに希少価値を付与することで、買わないことの機会損失を意識させます。

損失回避性(プロスペクト理論)によれば、人間は利益を得るよりも損失を避けることを優先する傾向があり、その差は2倍以上になるとも言われています。
3.保証をつける
このペンをご購入頂くと、5年間の無料交換保証をお付けします。
本議題には支払い条件の制約が無いため、分割決済時の費用対効果を強調するとより良いです。
例えば以下の文言を追加すると、実際使用している状況も想像させることができます。
ペンの寿命を5年と過程し、5年後に無料交換した場合、合計10年/月83円でこのペンを使用できます。毎月買い替えの手間を考えると、非常に手間要らずですよね。
なお、5年間の分割払いで支払額は月166円であり、今なら実質半額でご購入頂けます。

これが本当なら、購入者は喜ぶと思うんだけどなあ。

ペンは消耗品だから、本来この販売方法は使わないよ。あくまで”その場で売ること”を目的にしない限りね。
但し、保証が実際に利用される確率はそれほど高くありません。
最も保証が重視される生活家電においても、実際の利用率は3~4割程度に留まります。

引用元:テックマークジャパン
この保証書を紙媒体とし、かつ保証期間を長くすれば、実際の利用率はさらに下がるでしょう。

保証とは、実際の利用率を考慮して設定されるモノなんだ。
4.購入者特典をつける
このペンをご購入頂くと、期間限定で○○(手持ちの物)をプレゼントします。
本議題には粗利益の制約が無いため、相場1万円以上のモノを付属すればOKです。

これが一番簡単そうだね!

そうだね。でも、これらはあくまで一例であって、このやり方は営業の役割とは逸脱すると考える会社も少なくないんだ。
まとめ
本章でご紹介した方法は、あくまでその場で売ることを目的とした場合にのみ有効です。
例えばこの議題を会社面接で問われた場合、面接官が求めているのは物理的に売る方法ではなく、『1万円のペンと信頼の獲得という不釣合いなモノ同士をどう繋げるか』です。
ペンを1万円で売る方法【顧客優先編】
営業の役割とは、顧客を知り信頼を獲得することです。
本章でご紹介する方法は、実際に現場で多くの営業が実践しており、”顧客・営業・世間”の三方よしを目指すやり方になります。
顧客の背景をヒヤリングする
まず前提として、営業はどのような商談であっても、顧客情報のヒヤリングから始めます。
顧客を知ることで、”商品の選定・納期の確認・予算の確認・趣味嗜好の把握”ができ、商談を優位に進めることができます。

会社面接の場合、面接官は「1万円のペンが欲しいヒント」を事前に準備している可能性があるんだ。

それほどに、実際の現場では必須の行動ってことだね!
顧客の情報をヒヤリングしたうえで、もし1万円のペンと顧客に全く接点がない場合、以下の方法が有効です。
1.顧客の好きを獲得する
このペンをご購入頂くと、私に9,000円のバックマージンが入ります。そしてそのご恩は、今後の取引で必ずお返しします。初期投資として、私に賭けては頂けないでしょうか。

感情論!?実用性全く無視じゃん!

そう!でもこれが一番実用的で、万人にお勧めできる方法なんだ。
人は論理ではなく、感情でその商品やサービスを買うかを判断します。
そして商談では、相手の承認欲求をどれだけ満たすかがカギになります。営業から頼られたり、感謝されることで、顧客の自己承認欲求が満たすことができるのです。
なお、この言葉の前には『ミラーリング』と『自己開示』で、自分が”受けた恩は必ず返す人間であること“を相手に悟らせるようにしましょう。

ミラーリングとは、相手の言動や行動を無意識(意識的)に真似ることで、親近感や好意を抱かせるテクニックです。これと並行して自己開示(自分の内情を伝える)を行うと、相手の警戒心や緊張感を解すことができます。
2.『あなたにとって』このペンが必要である理由を説く
このペンは耐油・耐水性に優れており、紙だけでなく鉄・アルミに書くこともできます。
前述した通り、1万円のペンと信頼の獲得という不釣合いなモノ同士を繋げるには、その理由に独自性を設ける必要があります。
ここでは現場作業者をターゲットとしたPRをしていますが、その製品の”色・形・匂い・利点“を観察し、顧客にとってその商品が必要である理由を営業自身が考える必要があります。

説得力のある理由を解くには、顧客を魅了するほどの”実務経験と観察力”が必要だね。
最後に
今回は、実際に現場で営業をしている経験を踏まえ、1万円でペンを売る方法をご紹介しました。
ビジネスにおいて、付加価値の大きさは得られる利益に直結します。そしてその付加価値を、販売優先で付与した場合には短期的な商売となり、顧客優先で付与した場合は長期的な商売になります。
当然ながら商売とは長期的に行うモノであり、真に顧客目線を貫くことが、将来的な成功を導いてくれます。
今後も現代のビジネスマン向けに情報を発信していきますので、本ブログをブックマークして頂けますと幸いです。