競合との相見積もりに勝つには、入札前に勝負を決める必要があります。
本記事では、B2Bの法人営業向けに「競合との相見積もりに勝つ方法」について解説します。
はじめに

以下の「入札までの流れ」に沿った3ステップごとに、具体的な方法を見ていきましょう。

B2B取引における入札までの流れは以下の通りです。
顧客が要求仕様書を依頼先(相見積もりの場合は複数社)へ提出します。
要求仕様書には、個別仕様・共通仕様・納期・検収条件などが記載されます。
また仕様書とは別に、手配する理由・一社選定 or 相見積もりなどを記載した理由書も社内申請します。
商社・メーカーが要求仕様書の内容をもとに、顧客へ見積もりを提出します。
相見積もりの場合、顧客の購買部門が複数社の見積もりを同時に開封し、選定先を決定します。
仕様検討段階で勝つ方法
最も理想的な状況は、顧客が要求仕様を固める前に、競合のいない一社選定にすることです。
要求仕様段階で一社選定になれば、競合要因で見積もりの金額に悩む必要がありません。
仕様検討材料を提供する
顧客の社内申請で用いる理由書に必要な情報を、自社が提供する方法です。
例えば省エネ商材の場合、顧客の既存品と自社製品のエネルギー使用量を比較した資料。自動化の場合、現場の実働時間・CT(サイクルタイム)などを計測し自社製品と比較します。
これは他社ユーザーの実績を用いた理論値ではなく、顧客の環境で実際に測った実測値を提供した方が、理由書の承認がスムーズになり、かつ競合との差別化ができます。
仕様・納期・検収条件で差別化する
顧客の要求仕様書に記載される仕様・納期・検収条件などで差別化します。
要求仕様は顧客が構想するため営業が内容を決めることはできませんが、情報提供は可能です。
要求仕様書に盛り込まれる内容を確認し、「自社が対応できて」「他社が対応できない」付加価値を提案します。
承認ルートに懸念点を確認する
要求仕様書は、大型案件になるほど承認ルートが増えます。
この承認ルートから、自社の味方となり得るキーマンを探して懸念点を確認します。
もし競合先の選定に懸念点があれば、それを武器として差別化ポイントを提案します。
一社選定の合理性を提案する
顧客の担当者は、競合の数だけ依頼先の検討・見積もり依頼・仕様打合せをする工数が増えます。
顧客のマンパワーが足りなければ、「見積もり時点から顧客と伴走できる」一社選定の合理性を提案します。
但し、これは既に顧客との信頼関係が構築されている場合に限られます。
見積もり段階で勝つ方法
要求仕様書・理由書の段階で勝つことが難しい場合、見積もり段階で勝負します。
競合の相場を想定する
仕様検討段階では既に競合が決まっているため、競合先の社名はあらかじめ入手しておきましょう。
過去実績・他社ユーザーの実績から競合の相場を想定したうえで、見積もり金額から入札金額への値下げ幅を決めます。
この値下げ幅が広すぎると見積もりの正当性が問われますが、逆に狭すぎると競合に金額が漏れた際の危険性が増すため注意が必要です。
正当な範囲で商流を限定する
仕入先のいる案件であれば、仕入先が商流を限定してくれる可能性があります。
但し、これは以下すべてに該当する必要があります。
- 仕入先製品は他社の代替えがきかない。
- 仕入先製品の購入条件が要求仕様書に書かれている。
- 仕入先と普段から協力関係にある or 自社が仕入先製品購入のきっかけを作った。
入札段階で勝つ方法
既に見積もりを提出したものが、後付けで競合案件になることもあります。
「勝たなければならない」案件が入札まで追い込まれた場合、監査・会計・社内規定上の範囲内で以下の方法があります。
粗利益のバッファを利用する
社内エントリーで他案件の粗利益のバッファを利用し、相見積もり案件の見積もり金額を下げる方法です。
変更前
| 案件 | 区分 | 仕入金額 | 売上金額 | 粗利益 | 粗利率 |
| ○○部品一式 | 一社選定 | 100,000 | 125,000 | 25,000 | 20% |
| ○○製作費用 | 一社選定 | 500,000 | 625,000 | 125,000 | 20% |
| ○○現地工事 | 相見積もり | 500,000 | 625,000 | 125,000 | 20% |
変更後
| 案件 | 区分 | 仕入金額 | 売上金額 | 粗利益 | 粗利率 |
| ○○部品一式 | 一社選定 | 118,000 | 125,000 | 7,000 | 5.6% |
| ○○製作費用 | 一社選定 | 593,000 | 625,000 | 32,000 | 5.12% |
| ○○現地工事 | 相見積もり | 389,000 | 487,000 | 98,000 | 20.12% |
※ 自社の最低粗利率規定を5%とした場合

粗利益のバッファとは、粗利益から会社で決められている最低粗利率を差し引いた分の金額を指します。
一般的に、「顧客・仕入先に落ち度がないにも関わらず追加費用が発生した場合」に仲介業者が負担する目的で使われます。

初回の見積もり段階で値下げをすると競合に金額が漏れる懸念があるため、必ず入札の段階で値下げしましょう。
但し、案件のリピート時に金額の説明がつかなくなり、かつ監査では「意図的に粗利益を下げた」と見られる可能性があるため、基本的にこの方法は推奨しません。
やってはいけないNG行為
顧客や競合先と共謀し、当て見積もり(当て馬)などで意図的に選定先を決めることは、独占禁止法上(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)違反になる可能性があります。
参考文献:独占禁止法上の指針|公正取引委員会

当て見積もり(当て馬)とは、その案件を受注するつもりがなく競合より高い金額の見積もりを提出することを指します。
当て見積もりを提出する状況は、以下のいずれかです。
- 顧客・競合から当て見積もりの提出を依頼された場合。
- 依頼を受けた商社・メーカーがその案件を取る気がなく、かつ辞退できない場合。
見積もりの概要

B2Bの法人営業が知っておくべき、見積もりに関する基礎知識を見ていきましょう。
相見積もりと一社選定
見積もり提出から手配するまでの流れには、競合のいる相見積もりと、競合のいない一社選定の2種類があります。
相見積もりは複数の会社で同じ仕様の見積もりを提出し、その価格差で依頼先を決めます。相見積もりをする会社の数は、金額や顧客の社内規定次第で3社以上に及ぶこともあります。
一方で、一社選定の場合は競合先が存在しません。競合がいない一社選定は、以下いずれかの条件に該当する必要があります。
- 他社では製作できない製品の購入
- 既存の製作品・設備の修理・改造・リピート購入
- 上記いずれかに該当し、かつメーカーが特定の商社にしか見積もりを出さない。
相見積もりは、異なる商社が同じメーカーで見積もりをする場合もあれば、異なる商社が異なるメーカーで見積もりする場合もあります。
但し、前者はメーカーが複数の商社へ見積もりを提出することを了承する場合に限られます。
商流とは

商社・メーカーは、すべての案件が相見積もりになってしまうと十分な利益を出せません。
よって、メーカーの多くは自社の製品に関する情報は顧客に開示せず、かつ商流のある商社にしか見積もりを出しません。
最後に
今回は、B2B営業における「競合との相見積もりに勝つ方法」について解説しました。






