私は現役で商社の営業マンをしています。
会社組織から政府・宗教団体に至るまで、どのような組織にも「マネージャー」と呼ばれるトップ(管理職)が存在します。
今回は、「なぜ組織にはマネージャーが必要なのか」をテーマとし、トップ(管理職)の役割とホラクラシーについてご紹介します。

- 組織構造に不満を持っている人
 - マネージャーになる人・なりたい人
 
新野くん人を管理するのがマネージャーの仕事じゃないの?



メン!そうだね。但し「管理」の定義を言語化してみると、同じ組織内でも人によって違うことが少なくないんだ。
定義の認識の違いはそう珍しいことではありませんが、「組織内の役割」における認識の違いは、メンバーの離脱・エンゲージメント低下に直結します。
マネージャーが最初にやるべきは、「ビジョンを共有し方向性を定める」ことです。組織の目標を明確にすれば、それに賛同する人たちを集め、組織内の役割・評価基準を定めることができるのです。
尚、今回も個人の独断と偏見を含みますので、酔った商社マンの話に付き合ってる気分で、気軽にお読みください。
マネージャーの役割
20世紀初頭の経営学者アンリ・ファヨール氏は、マネージャーの仕事を「計画、組織、命令、調整、統制」と定義しました。これは組織の目標を達成するために、上司が果たすべき基本機能を示したものです。
この伝統的定義は、その後ピーター・ドラッカー氏によってさらに洗練されました。
ドラッカー氏はマネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具」と呼び、マネージャーを「組織の成果に責任を持つ者」と定義しています。
ビジョンを共有し方向性を定める
ハーバード大学のジョン・P・コッター教授は、マネージャーの役割は「将来のビジョンを共有し方向性を定めることから始まる」と述べています。
例えば企業のトップが「5年後に市場シェア1位になる」というビジョンを掲げ、それに向けた戦略を打ち出せば、組織全体が同じゴールに向かって動き出すことができます。
これはトップダウンやボトムアップなどの「タスクの意思決定」ではなく、もっと根本的な「組織の目標とそれを叶える道筋」を共有することを指します。
エンゲージメントを高める
組織のパフォーマンスを最大化するには、メンバーのエンゲージメントが重要になります。
世論調査機関ギャラップ社の調査では、「従業員のエンゲージメントの変動要因は、少なくとも70%が直属の上司に起因する」と推計されています。



上司ガチャの重要性は日々働いていてよく理解できるけど、70%ってすごい数字だね。



そうだね。ここまで大きな影響力を持つのは、「心理的安全性が確保できるか」が関わっているからなんだ。


心理的安全性とは、組織内で「報復や嘲笑を受けない安心感」のことを指します。
Google社が行った「プロジェクト・アリストテレス」という研究でも、成果の高いチームの最大の特徴は、心理的安全性の高さであると報告されました。
優秀な人材を揃えること以上に、「メンバーが安心して発言・相談でき、失敗を許容し合える雰囲気」が高業績な組織を生み出す鍵なのです。
命令統一の原則


https://www.shiksha.com/online-courses/articles/unity-of-command-principle-of-management/
組織論には「命令統一の原則」という考え方があります。これは「一人の部下につき直属の上司は一人にせよ」という原則で、複数の上司から指示を受ける事態を避けるものです。
組織の役割分担と優先順位の明確化
複数の指揮命令系統があると、「誰の指示に従えば良いのか」「優先順位はどれか」と部下が混乱し、場合によっては都合の良い指示だけを選んで責任を回避する問題も生じかねません。
そこで階層構造で指揮系統を一本化することにより、命令や情報伝達ルートが明確になり、組織運営の混乱を防げるのです。また、権限と責任の所在が明確になるため、各自の役割に専念でき責任逃れも起きにくくなります。
階層構造はしばしば「官僚的で硬直的」と批判されますが、適切に設計されたピラミッド型組織は、組織を効率よく動かす最も自然な構造だとも言われます。
マネージャーが必要な理由
では、そもそもなぜ組織には上述した役割を持つマネージャー(階層構造)が必要なのでしょうか。
実は、階層構造を無くしたフラットな組織は米国の企業が実際に導入しており、結論フラットな組織構造が間違っているという証明は、現在もされていません。
ホラクラシーを導入したZappos社
権限委譲と自己管理を徹底するフラットな組織は、「ホラクラシー」と呼びます。
このホラクラシーを導入した代表例が、米国のオンライン小売企業であり、Amazonの子会社でもあるZappos社です。
同社は「社内に官僚制が築かれつつある」という危機感から、「都市の成長に関する統計」に着想を得て、2013年頃から従来のピラミッド型組織を廃止しました。



「都市の成長に関する統計」ってなんぞ?



都市は人口が2倍に増えるごとに住民一人当たりの生産性が約15%向上する。それに対し、企業は規模拡大に比例して一人当たりの生産性が低下する。この乖離に着目したんだ。
自社を都市のように「肩書も上司もないフラットな組織」へ構造化し、権限委譲や意思決定について記した「ホラクラシー憲法」の基、成長しても創造性や生産性が向上し続ける組織を目指したのです。
業績への影響
Zappos社のホラクラシー化という大胆な組織改革により、導入時には全社員約1500名中18%に当たる約260名が退職しました。
この大量退職の中には、旧来マネージャー職だった社員が多く含まれており、ルールの複雑さや権力が撤廃しきれていないことに対して、不満の声も一部で聞かれたとされています。
しかし、一時的に人員の入れ替わりや社内混乱を招いたものの、事業業績には大きな悪影響はありませんでした。
同社は2015年度に営業利益9,700万ドル(前年比約77.9%増)という高い目標を掲げていましたが、この組織転換期においても、その目標を概ね達成したと伝えられています。
現在の状況
Zappos社はホラクラシー導入後も組織モデルの試行錯誤を続けており、現在もフラットで自己管理型の組織文化自体は維持しつつ、ミクロな運用面では独自にカスタマイズを続けています。
例えば、2017年には内部市場原理を導入し、自社のチーム(サークル)自体を“”小さな会社””に見立て、他のチームに対しサービスを提供・売買させる仕組みに変更したのです。
これは、従来のホラクラシー下でも「予算配分」や「人員計画」は一部のチームが一括管理していたため、見えないヒエラルキーを撤廃する目的があったとされます。
創業者のトニー・シェイ氏は2020年に亡くなりましたが、彼は「市長(CEO)は去っても街(組織)は残る」という言葉を残しています。
まとめ
階層を減らして自律性を高めるアプローチは、現在のところそれ自体が組織を崩壊させる要因にはなり得ないと言えます。
確かに「指示を必要とする人たち」にとって、完全なフラット化は混乱の原因になるため、ホラクラシー化が従業員構成の変化や離職を招くこともZappos社の例が示しています。
しかし階層構造の云々よりも、マネージャーやチームが、自身に課せられた役割を「周知し果たせるか」が、組織運営において最も重要であることは確かです。
参考文献:CorporateRebels
最後に
今回は、「なぜ組織にはマネージャーが必要なのか」をテーマとし、トップ(管理職)の役割とホラクラシーについてご紹介しました。
今後も現代のビジネスマン向けに情報を発信していきますので、本ブログをブックマークして頂けますと幸いです。





