
- 奨学金の概要を知りたい人
- 利用するべきか迷っている人
奨学金制度は大学生全体の3割以上が利用していますが、その制度の実態や「借りるべき判断基準」を知る人は少ないと思います。
本記事では、奨学金制度の全体像(給付型・貸与型)を整理し、借りるべき判断基準として奨学金が生涯賃金や結婚に与える影響を解説します。
奨学金制度の概要

日本の大学生向け奨学金制度は、返済不要の「給付型」奨学金と、卒業後に返済が必要な「貸与型」奨学金に分かれます。
さらに、貸与型奨学金には第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(有利子)があります。有利子の利率は「固定方式」と「見直し方式」どちらかを選べ、見直し方式の利率は卒業後の市場金利に連動します。
2025年時点の第二種奨学金の利率は、固定方式で年1.641%、見直し方式で年1.100%程度となっています。(上限3%)
くろひつじ「見直し方式」は市場金利の変動リスクに耐えられる人向けだから、迷ったら固定方式にすると良いよ。


利子とは、返済金額から金利(利率)が上乗せされた金額のことです。お金を借りる側は一般に『利息』と呼びます。
例えば奨学金300万円・金利1.641%・月の返済額16,980円で毎月一定の金額を返済した場合(定額返済方式)、総返済額は3,463,971円となり、完済までに要する年数は約18年。利子総額は463,971円になります。


日本学生支援機構
日本学生支援機構(JASSO)は国内最大の奨学金実施機関であり、大学生の3割以上が利用しています。2024年度のJASSO利用者数は、給付型奨学金が約35万人、貸与型奨学金が約94万人にも上ります。
| 区分 | 利用者数 | 平均給付/借入額 |
| 給付型奨学金 | 約35万人(全学生の10.5%) | 約172万円 |
| 貸与型奨学金 | 約94万人(全学生の26.4%) | 第一種 約210万円 第二種 約324万円 |



大学生の5人に1人以上は卒業時に借金を背負った状態になるんだね。。
貸与型奨学金の返還状況
貸与型奨学金を利用した学生が借入金を返済し終えるまでの平均期間は、約15年間に及びます。22歳で大学を卒業した場合、完済できるのは37歳です。
20代後半~30代前半は、結婚や出産などのライフイベントが多い時期であり、奨学金の返済時期はそれらの出費時期が重なる実情があります。
実際に奨学金を3ヶ月以上延滞している延滞者数は、令和6年度だけで約12万7千人にも上ります。
奨学金を借りるか迷ったら?
奨学金は一般的な借金とは違い、借り手の返済能力は見られない特徴があります。
つまり、第3者目線で「借金をするべきか・しないべきか」の判断ができないため、自分自身で『将来的に返済額を超えるリターンが見込めるのか』を判断する必要があります。
奨学金と生涯賃金の関係性
JASSO利用者を国の行政データで追跡し、生涯賃金・就業・結婚まで集計するといった公式統計は、残念ながら存在しません。
代替として、慶應義塾大学が実施している「全国パネル調査(JHPS/KHPS)」を使った研究があります。本研究では、大学進学による期待生涯所得の増加は、概ね2,003万円~7,126万円としています。


奨学金受給が高等教育機関卒業後の就業・所得に与える影響|慶應義塾大学


この研究は「奨学金が魔法の収入増を起こす」ではなく、奨学金を使って進学・卒業できた(orできなかった)ことが、生涯所得にどう結びつくかを観察データで推計したものです。
—以下抜粋—
奨学金を借りて大学等の高等教育機関に進学することは、生涯所得を高める効果を有しており、たとえ貸与型奨学金であっても返還可能な分の所得を得ていることが示唆された。ただし今回の推定では、あくまで卒業後すぐに就職し、65 歳定年時まで働き続けた場合のシミュレーション結果である。休業や失業に直面した場合は分析上考慮していないため、結果の解釈には一定の留意が必要であることは言うまでもない。
高卒・大卒の生涯賃金
労働政策研究・研修機構が学歴別の「生涯賃金」を推計した結果、高卒と大卒では約4,720万円~5,200万円の差が生まれています。
この生涯賃金は過去の実績を追跡したものではなく、『現在の年齢別平均賃金』を足し上げて推計されたものです。
卒業後すぐ就職しフルタイム正社員を継続。60歳で退職した場合(退職金なし)
- 男性:高卒 2.156億円 / 大卒 2.628億円(差 +4,720万円)
- 女性:高卒 1.579億円 / 大卒 2.099億円(差 +5,200万円)
60歳以降も平均引退年齢まで就労した場合(退職金あり)
- 男性:高卒 2.753億円 / 大卒 3.395億円(差 +6,420万円)
- 女性:高卒 2.000億円 / 大卒 2.672億円(差 +6,720万円)
企業規模別の生涯賃金
但し、高卒・大卒の違いよりも企業規模の違いの方が、生涯賃金に大きな差を生みます。
例えば60歳以降も平均引退年齢まで就労し退職金ありの場合、企業規模が「1,000以上」と「10~99人」で約1億円にも及ぶ差が生まれます。


つまり、大卒で小規模企業に就職するよりは、高卒で大規模企業に就職した方が、生涯賃金が高くなるのです。
なお、2025年7月末時点の「高校新卒者向けのハローワーク求人」では、従業員1,000人以上の企業の求人が37,625件(全体の約8%)存在します。
高卒・大卒の就職率
文部科学省の統計では、2025年3月卒の就職率は高卒・大卒のどちらも98%と同水準です。
但しこの「就職率」とは、あくまで『卒業時点の就職の有無』を指し、自分が就職したい会社・業界・職種に就職できたかどうかは別問題です。
参考文献:大学等卒業者及び高等学校卒業者の就職状況調査結果|文部科学省
主に現場(工場・施工・物流・店舗・施設など)を持つ業界では、高卒新卒者を採る会社が多くありますが、逆に商社・コンサル・情報通信・金融などの業界は、大卒者(総合職)を採用しています。
高卒求人数の多い業界
| 業界 | 高卒求人数 |
| 製造業 | 146,441 |
| 建設業 | 87,044 |
| 卸売・小売 | 56,286 |
| 医療・福祉 | 38,442 |
| 運輸・郵便 | 35,515 |
参考文献:令和7年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人」取りまとめ|厚生労働省
奨学金が結婚に与える影響
2024年度の慶應義塾大学の研究(JHPS第二世代付帯調査=JHPS-G2)では、貸与奨学金と婚姻・出生の関連性も分析しています。
結論として、男性は貸与奨学金による影響はありませんが、女性は「結婚が遅れる・子供の数が減る」などの負の影響があるとされています。
参考文献:奨学金の負債が若者の家族形成に与える影響|慶應義塾大学
本研究の結論
- 奨学金の受給額の差は結婚確率に影響は与えない。
- 男性:貸与奨学金の利用が結婚に影響を与えない。
- 女性:貸与奨学金の利用が結婚に負の影響を与える。
但し女性の場合、そもそも大学卒業が結婚率を下げる統計があるため、奨学金による影響というよりも、進学による影響が大きいと考えられます。


やりたいことがあったらどうするの?
高校卒業後の進路は、自分の人生を分岐する一つのターニングポイントです。
自分のやりたいことを優先するか、とりあえず大学へ行くか、就職するかなど、将来後悔しないために悩む時期でもあります。
感情論になりますが、人生で最も重要なのは「自分のやりたいことをやること」です。もし自分のやりたいことがあるのであれば、その職業の大卒・高卒の比率を調べましょう。
高校生の将来の夢


例えば上図の職業でいうと、会社員・公務員・教師教員であれば大学進学をお勧めしますが、ゲームクリエイター・看護師であれば専門卒。芸能人や実況者であれば進学の必要はありません。
起業したい場合
一例として、私の高校時代の夢は「社長になること」でした。
開業者(雇われ社長は除く)は高卒の人が多い印象ですが、その実情は大学・大学院卒が最多になります。
開業者の最終学歴
- 大学・大学院:35.9%
- 専修・各種学校:27.9%
- 高校:27.3%


日本人の最終学歴の割合は、高卒が約4割強、大卒(大学・大学院卒)は25%前後であることから、人口分布を加味しても、開業者の大卒の割合は高いことがわかります。
最後に
今回は、奨学金制度の全体像(給付型・貸与型)を整理し、借りるべき判断基準として奨学金が生涯賃金や結婚に与える影響を解説しました。










