私は現役の商社営業マンとして日々仕事をしています。また副業として輸入物販やブログなども行っています。日々色々な取引先と仕事をする中で、最近はよくAIの活用という言葉を耳にするようになりました。では実際に仕事でAIを活用している人はどのくらいいるのでしょうか。
統計情報
はじめに、ChatGPTなどの生成AIを含めたAI・IoTをビジネスに取り入れている企業の割合と、その費用対効果の統計情報を見てみましょう。
AIを導入している企業の割合
厚生労働省の資料によるとデジタルデータの収集・解析の為、AI・IoTなどのシステム・サービスを導入している企業の割合は、従業員規模300人以上の企業で19.0%、100人~299人の企業で8.9%となっています。 また業種別に、導入済もしくは検討中を示すグラフは下図となります。

数値の最も高い業界を赤枠で囲っています。クラウドに関しては農業以外の業界は盛んに取り組んでいるようにみられますが、それ以外の分野では、特定の特化業界以外は数値として現れません。AIの分野に関しては、導入していない業界の方が圧倒的な割合を占めます。
2024年の総務省の情報通信白書によれば、日本の企業における生成AIの業務導入率は18%であり、中国83%、米国73.5%、オーストラリア66.2%と比較してかなり低い水準にあります。
AI導入における費用対効果
アクセンチュアの調査によれば、AI主導の業務プロセスを導入した企業は、同業他社と比較して収益成長率が2.5倍高いことが報告されています。 またAIを活用した企業の生産性は、導入していない企業と比べて2.4倍高いことが示されています。
日本企業の実情
私は商社において、大手自動車メーカーや大手マザーマシンメーカー、それらに携わる様々なメーカーと日々取引しています。その中でAIの活用を実際に行っているかと聞くと、個人的に興味はあるが導入が評価対象ではない為優先順位が低いとよく言われます。昨今の人員削減・コスト削減・円安による企業取引の活性化により、評価対象ではない取り組みに割く時間がないのが実情です。
マザーマシンとは?
マザーマシン(Mother Machine)は、製造業において「工作機械」のことを指します。機械や製品を作るための機械、つまり「機械を作るための機械」とも呼ばれます。日本のものづくり産業を支える、日本の特化分野とも言えます。
生成AIとは
生成AIとは、新しい文章や画像、音声、動画などを生成するAI技術です。生成AIにはChatGPT以外にも多くのモデルやサービスが存在し、それぞれに得意分野があります。以下に代表的な生成AIとその得意分野をご紹介します。
特徴 | Gemini(旧 Bard) | ChatGPT | Claude |
---|---|---|---|
開発元 | OpenAI | Anthropic | |
リアルタイム性 | 早い | 遅い | アクセス制限有り |
得意分野 | 最新情報 | 会話・議論・創造 | 安全性・倫理性 |
統合性 | Google製品 | Microsoft製品 | APIや企業向け製品 |
利用コスト | 基本無料 | 一部有料 | 無料トライアルと有料版 |
安全性 | 比較的低い | 比較的高い | 極めて高い |
ターゲット | ライトユーザー | ヘビーユーザー | ビジネスユーザー |
APIとは?
API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアやプログラム、Webサービスなどの間をつなぐインターフェースのことです。APIを利用することで、既存のソフトウェアやアプリケーションの機能を新しいアプリケーションに取り込むことができます。
選び方のポイント
- 最新情報を知りたい…Gemini(Google検索連携)
- 汎用性を重視したい…ChatGPT(多様なタスクに対応可能)
- 安全性・倫理性を優先…Claude(特に企業利用に適している)
Gemini(旧 Bard)

主な特徴
Googleが開発した生成AIで、Google検索結果のwebページを情報元ソースとしています。最大の魅力はリアルタイム性であり、他の生成AIより最新情報を取得可能です。例えば2024年12月現在、2024年5月13日にリリースされたChatGPT4oについて質問をした場合、Geminiでは回答できますが、ChatGPTでは回答できません。
Geminiの場合

ChatGPTの場合

無料と有料の違い
Geminiには、無料版と有料版(Gemini Advanced)の2つのプランがあります。それぞれのプランで、利用できる機能や性能が異なります。但し有料を選ぶなら後述するChatGPTの方が優秀です。
機能 | 無料版 | 有料版 |
---|---|---|
モデル | Gemini Pro | Gemini Ultra |
価格 | 無料 | 月額2,900円 |
処理速度 | 比較的遅い | 比較的速い |
処理能力 | 基本的なタスクに対応 | 複雑なタスクや長文の処理に対応 |
機能制限 | 利用回数や情報量に制限有り | 制限無し |
高度な機能 | 一部利用不可(画像生成、音声認識など) | 全て利用可能 |
- 無料版…基本的な機能を利用できます。日常の調べ物や趣味でAIを試したい方におすすめ。
- 有料版…高度な機能を活用できます。ビジネスシーンや開発などでAIを利用したい方におすすめ。
ChatGPT 4o

主な特徴
無料版ではgeminiと比較してもそれ程の違いは感じられませんが、有料版となると圧倒的に便利になります。ChatGPTの魅力は大きく2点あり、1つ目は外部連携ツールの豊富さです。ChatGPT Plus(20ドル/月)プランに加入すると、赤枠のカスタムGPTを作成して使用する機能が付きます。

ChatGPTの外部連携ツールは、GPTもしくはカスタムGPTと呼びます。GPTとは特定の目的やアプリに合わせてChatGPTをカスタマイズし、第三者に公開することができる機能です。Geminiには現状それに準ずる機能はありません。
Geminiの有料プラン

GPTを利用する方法
一例として、GPTとCanva(画像編集ソフト)を連携する方法をご紹介します。
ChatGPTにログインし、左側のメニューよりGPTを探すをクリックします。

赤枠の検索欄より連携したいツール名を検索してください。ここではCanvaと検索します。

どのアプリもチャット形式のページになります。ここではCanvaのページへ移動しましたので、試しに本ブログの画像を生成してもらいます。

いくつかの画像をテキスト指示のみで生成してくれました。赤枠の画像をクリックします。

Canvaの編集画面より、既に絵が完成している時点からスタートできます。

Microsoft製品と連携する方法
2つ目の魅力はMicrosoft製品とORC機能の統合により、チャットでのテキスト指示のみでEXCELの図表やWordの誓約書、PPTの会社紹介などを生成してくれることです。
OCR機能とは?
OCR(Optical Character Recognition)機能とは、紙や画像に印刷されている文字を読み取り、テキストデータに変換する機能です。スキャナーやデジタルカメラなどの機器に備わっていることが多く、企業では業務効率化やペーパーレスの実現に活用されています。
例えば本ブログの運営元である新野商事に関してPPTを作成する場合、ChatGPTにて最初の土台を生成できます。


注意点
AIは目まぐるしいスピードで成長しています。現在はChatGPTが得意な分野も、少し時間が経てばGeminiの方が上回る可能性があります。また日本語を用いた指示では1度の指示で思ったような資料ができず、何度も修正する必要があるのが実態です。
生成AIを利用するコツ
ビジネスで本格的に活用するにはコツが必要です。理想の出力を導き出す目的で、以下の条件を指示内容に盛り込むことをおすすめします。
- 役割を与える…例:あなたは○○会社の法人営業担当です。
- 前提を与える…例:AI未着手の会社向けに、○○会社のプレゼンテーション資料を作成します。
- 条件を与える…例:事業内容は(URL)を参照してください。拡販したい商品は○○です。
- 制限を与える…例:プレゼンテーション資料はAtoZで思考して作成してください。
出力の内容が曖昧な場合
条件は突き詰めれば膨大な量となり、かつ指示の方法も複雑化する為、初見では中々難しいと思います。その場合には、以下の文言を文面の最後に追記しましょう。生成AI側が必要な条件を質問してきてくれます。
- 出力が曖昧にならないよう、最初に私に質問してください。
上述した方法でも目的の出力にならない場合、以下の文言を文面の最後に追記しましょう。生成AI自身が出力を評価してくれます。この評価を基に、自分の目的に沿った出力をどう導き出すか判断してみましょう。
- 出力後、100点満点で出力を評価し、理由を教えてください。
会話形式の場合
プレゼンテーション資料やSNS発信用のテキストを生成AIで作る場合、会話形式で行うと文面がフランクになります。以下どちらかの文面を文頭に入れることをおすすめします。
- User:こんにちは。~~~~
- User first response: こんにちは。~~~~
画像生成AI
これまで認知度の高い代表的なツールをご紹介しましたが、生成AIにはそれぞれ特化した分野があり、目的によっておすすめのツールが異なります。以下では一例として画像生成を目的とした場合のおすすめツールをご紹介します。
選び方のポイント
- AIが生成した画像を編集したい…Canva(ChatGPT画像生成AIとの連携も可能)
- アニメチックな画像を生成したい…MidJourney(派生モデル:にじジャーニーを利用)
- 画像以外に生成したいものがある…DALL·E(ChatGPTへの有料登録)
Canva
生成した画像をそのまま編集できる為、画像生成が目的の場合には最もおすすめできます。画像生成AIは後述するDALL·Eなどを連携し使用できます。
- 開発元:Canva Pty Ltd
- 特徴:DALL·Eなどの外部ツールと連携が可能。
- 利用方法:Canvaのマジック生成上でテキスト指示。

MidJourney
Midjourneyはチャットアプリ「Discord」のコミュニティに参加して、画像生成AIとチャットすることで利用することができるツールです。
- 開発元:inkX Japan
- 特徴:2次元画像生成に特化した「にじジャーニー」という派生モデルがある。
- 利用方法:Discordチャット上でテキスト指示。
DALL·E
ChatGPT上での画像生成はDALL·Eが使われています。画像生成のみが目的でChatGPTへの有料登録することは、他のツールより見劣りする為おすすめしません。
- 開発元:OpenAI
- 特徴:Canvaなどの外部ツールとの連携が可能。
- 利用方法:ChatGPTチャット上でテキスト指示。
生成AIの種類
画像生成以外にも以下の用途でAIを活用できます。それぞれ特化したツールがありますので、自分の目的に合った生成AIを利用しましょう。
音声生成
- Voice Engine(OpenAI):15秒の音声サンプルから話者の声を模倣。
- VALL-E(Microsoft) :音声サンプルから高品質な音声合成が可能。
- AITalk:日本語に特化した音声合成AIツールで、自然な日本語の発音が特徴。
- コエステーション:有名人やキャラクターの声を模倣できる点が特徴。
動画生成
テキストから動画生成
- RunwayML:テキストプロンプトから高品質な動画を生成。
- Synthesia:アバターを用いて人が話しているような動画を生成。
- InVideo:テンプレートや素材が豊富で、初心者でも簡単に動画作成が可能。
画像や動画からの生成
- D-ID:静止画に命を吹き込み、まるで生きているかのような動画に変換。
- Luma AI:動画から特定のオブジェクトを抽出したり、背景の変更が可能。
アニメーション生成
- Pika Labs:2D画像から3Dモデルを作成し、アニメーションが作成可能。
- ToonMe:写真をアニメ調の動画に変換。
音楽生成
- MuseNet(Google):クラシックから現代音楽まで様々なジャンルの楽曲を生成。
- Jukebox(OpenAI):アーティスト名や歌詞を入力し、ボーカル付きの楽曲を生成。
- InVideo(Google):オープンソースプロジェクトで、音楽の視覚化や音楽理論の研究も可能。
プログラミングコード生成
- GitHub Copilot:
- プログラミング中にリアルタイムでコードを提案。
- GitHubと連携し既存のコードベースを活かした開発が可能。
- Tabnine:
- コード補完機能に特化したAI。
- 機械学習モデルによってコンテキストに合わせたコードを提案。
- Codeium:
- 無料で利用できるAIコード補完ツールで、70以上のプログラミング言語に対応。
- コードベースやコンテキストを理解し、プロジェクトのスタイルに合った最適なコードを提案。
- Amazon CodeWhisperer:
- Amazon Web Servicesが提供するAIペアプログラミングツール。
- 自然言語による指示からコードを生成したり、既存のコードの改善が可能。
最後に
AI・IoTや3Dプリンタなど、現代の成長産業は日々進化を続けています。市場ではIT革命に続くAI革命と呼ばれますが、昨今の成長産業は初見では中々手を付けづらい特徴があります。但し今後は、成長分野のツールを使えるかどうかで生産性が大きく変わってくる時代となります。
この分野は専門の会社が多くあり、突き詰めると底の無い沼のようです。物怖じせず、色々なAIを並行して利用していきましょう。今後もBtoB向けで様々な情報をご紹介しますので、ぜひブックマークして頂けますと幸いです。